第6章 動名詞

動名詞を用いた慣用表現
─ 「前置詞 to + 動名詞」の罠と頻出イディオム

look forward to doing, It is no use doing, There is no doing ──
動名詞を含む慣用表現は入試の定番。とくに「前置詞 to の後ろに動名詞」は、
to不定詞と混同しやすい最大の落とし穴です。

1前置詞 to + 動名詞 ─ 最重要の識別ポイント

英語の to には2つの顔があります。 不定詞を作る to(後ろに動詞の原形)と、前置詞の to(後ろに名詞・動名詞)です。 以下の表現に含まれる to はすべて前置詞です。後ろに動詞の原形を置いてはいけません。

文法ルール:前置詞 to + 動名詞をとる重要表現

look forward to doing「〜することを楽しみにしている」

be used [accustomed] to doing「〜することに慣れている」

object to doing「〜することに反対する」

when it comes to doing「〜することになると」

What do you say to doing?「〜するのはいかがですか」

devote oneself to doing「〜することに専念する」

with a view to doing「〜する目的で」

※ これらの to はすべて前置詞。後ろには動名詞(または名詞)がくる。
※ to不定詞(to + 動詞の原形)にしてはいけない。
例文で確認
I'm looking forward to seeing you in Japan.
日本であなたに会えることを楽しみにしています。
She is not used to writing formal letters.
彼女は正式な手紙を書くことに慣れていない。
She did not object to my working late at night.
彼女は、私が夜遅くまで働くことに反対しなかった。
When it comes to running, John is definitely the best in class.
走ることになると、ジョンは間違いなくクラスで一番だ。
落とし穴:to の後ろに原形を置いてしまう

to を見ると反射的に「不定詞だ」と思い込み、動詞の原形を続けてしまうのが典型的なミスです。

✕ 誤:I'm looking forward to see you.

✓ 正:I'm looking forward to seeing you.

「その to は前置詞か、不定詞の to か?」── この識別が入試の合否を分けます。

ネイティブの感覚:look forward to doing の to

look forward to のイメージは「ある具体的なできごとに向かって(= to)目を向けている(= look forward)」。

to の先にあるのは「具体的なできごと」なので、名詞や動名詞がきます。to不定詞の「これから〜する」とは役割が異なるのです。

ワンポイント:be used to doing と used to do の区別

be used to doing「〜することに慣れている」── 前置詞 to + 動名詞

used to do「(以前は)よく〜したものだ / 〜だった」── 助動詞類 + to不定詞

be used to do「〜するために使われる」── 受動態 + to不定詞

この3つの区別は正誤問題・書きかえ問題で頻出です。

2「〜してもむだだ」の表現

動名詞を使った「〜してもむだだ」の表現は複数あります。書きかえ問題で問われることが多いので、セットで覚えましょう。

文法ルール:「〜してもむだだ」を表す3つの形

1. It is no use [good] doing「〜してもむだだ」

2. There is no use [point / sense / good] (in) doing「〜してもむだだ」

3. It is useless to do「〜してもむだだ」(to不定詞を使った書きかえ)

※ 1と2は同じ意味。2の動名詞の前の in は省略されることがある。
※ 3は to不定詞を使った表現。書きかえ問題で頻出。
例文で確認
It is no use telling her not to do it.
彼女にそれをするなと言ってもむだである。
= It is useless to tell her not to do it.
(同じ意味の書きかえ)
The line is dead. There is no use trying to use the phone.
回線が切れている。電話を使おうとしてもむだだよ。
There is no point in having an expensive personal computer if you never use it.
まったく使わないなら、高価なパソコンを持っていてもむだである。
ここが本質:no use = 「役に立たない」

It is no use doing の no use は「役に立たない(= useless)」ということ。doing の部分には「具体的にやっていること」が入ります。

There is no point (in) doing の point は「意味・意義」。「〜することに意味がない」が直訳です。

3There is no doing / cannot help doing

There is no doing(〜することはできない)

文法ルール:There is no doing

There is no doing「〜することはできない」

= It is impossible to do(to不定詞を使った書きかえ)

※ 「〜することが存在しない」→「〜することはできない」の意味。
例文で確認
There is no telling when John will show up.
いつジョンが現れるかわからない。(= 判断することができない)
There is no telling who will win the gold medal.
誰が金メダルをとるかは断言できない。

cannot help doing(〜せずにはいられない)

文法ルール:cannot help doing

cannot help doing「〜せずにはいられない」

= cannot (help) but do(同じ意味の別表現)

※ help は「避ける」の意味。「避けることができない」→「せずにはいられない」。
例文で確認
I can't help laughing at his jokes.
彼の冗談に笑わずにはいられない。
= I cannot but laugh at his jokes.
(同じ意味の別表現)

4省略可能な in の後に動名詞をとる表現

以下の表現では、前置詞 in が省略可能です。in があってもなくても意味は同じです。

文法ルール:(in) doing をとる重要表現

have difficulty [trouble] (in) doing「〜するのに苦労する」

be busy (in) doing「〜するのに忙しい」

spend + 時間 + (in) doing「〜するのに(時間)を費やす」

It goes without saying that ...「〜は言うまでもない」

on doing「〜するとすぐに」

in doing「〜するとき / 〜する際に」

例文で確認
I had some difficulty (in) telling one student from another.
学生一人ひとりを見分けるのに少々苦労した。
They are very busy (in) doing their homework.
彼らは宿題を片付けるのに大忙しだ。
I usually spend two hours (in) doing my homework.
いつも宿題をするのに2時間を費やす。
On hearing the news, she smiled quietly to herself.
そのニュースを聞くとすぐに、彼女はひとり静かに笑った。
In trying to make a decision, it is important to keep a proper sense of priority.
決断をしようとするときは、何を優先すべきかの正しい感覚を保つことが重要だ。

5その他の重要慣用表現

以下の動名詞を使った慣用表現もよく出題されます。まとめて押さえておきましょう。

表現 意味
feel like doing 〜したい気がする
How [What] about doing? 〜するのはいかがですか
be worth doing 〜する価値がある
It goes without saying that ... 〜は言うまでもない
on doing 〜するとすぐに
feel like doing 〜したい気分だ
例文で確認
I don't feel like watching a movie tonight.
今晩は映画を見る気にならない。
How about eating Thai food for lunch?
昼食にタイ料理を食べるのはどう?
Her new book is worth reading.
彼女の新刊は読む価値がある。
It goes without saying that smoking is bad for one's health.
喫煙が健康に悪いことは言うまでもない。
She didn't mean to make him feel like crying.
彼女は、彼を泣きたい気分にさせるつもりはなかった。
ワンポイント:be worth doing の主語に注意

be worth doing の主語は、doing の目的語に当たるものです。

Her new book is worth reading. = It is worth reading her new book.

reading の後に目的語(her new book)は置きません。主語がすでにその役割を果たしているからです。

6つながりマップ

動名詞の慣用表現をマスターしたら、次のトピックへ進みましょう。

  • → G-7-1 名詞を修飾する分詞:同じ -ing 形でも、名詞を修飾するときは「現在分詞」。動名詞との区別を学びます。
  • → G-6-1 動名詞の基本用法:動名詞の4つの役割や意味上の主語を復習したいときはこちら。
  • → G-6-2 動名詞 vs 不定詞:意味が変わる動詞(remember, forget, try)をもう一度確認したいときはこちら。
  • → G-5 不定詞:to不定詞の全体像を確認しましょう。前置詞 to との区別が曖昧なときに特に有用です。

📋まとめ

  • 前置詞 to + 動名詞:look forward to doing, be used to doing, object to doing, when it comes to doing など。to の後に原形を置かないこと
  • 「〜してもむだだ」:It is no use doing = There is no point (in) doing = It is useless to do
  • There is no doing =「〜することはできない」(= It is impossible to do)
  • cannot help doing =「〜せずにはいられない」(= cannot but do)
  • (in) doing をとる表現:have difficulty (in) doing, be busy (in) doing, spend + 時間 + (in) doing
  • その他の頻出表現:feel like doing, How about doing?, be worth doing, It goes without saying that ..., on doing

確認テスト

Q1. 次の英文の誤りを正してください。
I look forward to see you in Japan sometime soon.

▶ クリックして解答を表示to see → to seeing。look forward to の to は前置詞なので、後ろには動名詞がくる。to不定詞にしてはいけない。

Q2. 「彼女にそれをするなと言ってもむだだ」を英語にしてください(It is no use ... の形で)。

▶ クリックして解答を表示It is no use telling her not to do it. ── It is no use doing の形に「tell A not to do(Aに〜しないように言う)」をあてはめる。

Q3. be used to doing と used to do の意味の違いを説明してください。

▶ クリックして解答を表示be used to doing =「〜することに慣れている」(前置詞 to + 動名詞)。used to do =「(以前は)よく〜したものだ / 〜だった」(助動詞類 + to不定詞)。前者は「現在の習慣・状態」、後者は「過去の習慣(今はしていない)」。

Q4. 次の英文を和訳してください。
There is no telling who will win the gold medal.

▶ クリックして解答を表示「誰が金メダルをとるかは断言できない。」── There is no doing =「〜することはできない」。telling は「判断する・わかる」の意味。

9入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

6-3-1 A 基礎 前置詞 to + 動名詞 空所補充

I'm nervous. I'm not used (  ) to a large audience.

  • ① to speaking
  • ② to speak
  • ③ in speaking
  • ④ of speaking
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

① to speaking

解説

判断のポイント:be used to doing は「〜することに慣れている」。ここの to は前置詞なので、後ろには動名詞がきます。

② to speak は不定詞の形なので不可。be used to の to は前置詞であることを覚えておきましょう。

「私は緊張しています。たくさんの聴衆に話をするのに慣れていないのです」

B 発展レベル

6-3-2 B 発展 There is no point (in) doing 空所補充

There is no point (  ) an expensive personal computer if you never use it.

  • ① with having
  • ② to have
  • ③ in having
  • ④ for having
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ in having

解説

判断のポイント:There is no point (in) doing は「〜してもむだである」。前置詞 in を省略しないパターンでは ③ in having が正解です。

There is no point / use / sense / good のいずれも (in) doing の形をとることを覚えておきましょう。

「まったく使わないなら、高価なパソコンを持っていてもむだである」

C 応用レベル

6-3-3 C 応用 have difficulty (in) doing 整序

次の語句を並べ替えて英文を完成させなさい。

He (  ) asked by the students.

[ all / answering / difficulty / had / questions / the ]

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

He had difficulty answering all the questions asked by the students.

解説

判断のポイント:have difficulty (in) doing は「〜するのに苦労する」。本問は in が省略されたパターンです。

had difficulty answering の形を作り、answering の目的語として all the questions を続けます。asked by the students は questions を後ろから修飾する過去分詞句です。

「彼は学生の質問すべてに答えるのに苦労した」

得点の差がつくポイント
  • have difficulty (in) doing のパターンを知っていれば一瞬で解ける
  • in の省略があることで、difficulty の直後に動名詞が来る形に気づけるかがカギ