第6章 動名詞

動名詞 vs 不定詞
─ 「リアリティ」と「これから」で使い分ける

動名詞のみをとる動詞、不定詞のみをとる動詞、そして意味が変わる動詞。
丸暗記に頼らず、ネイティブの「リアリティ」vs「これから」の感覚で整理すれば、自然に使い分けられるようになります。

1核心:「リアリティ」の -ing vs「これから」の to

動名詞と to不定詞はどちらも「〜すること」と訳せますが、ネイティブの頭の中では明確に異なるイメージが働いています。

ここが本質:動名詞と to不定詞の根本的な違い

動名詞(-ing)= リアリティ:具体的にその行為が起きている(起きた)ことを生き生きと描写する形。

to不定詞(to do)= これから:まだ実現していない、これから起こることに目を向ける形。

この感覚さえ掴めば、どの動詞がどちらをとるかは丸暗記ではなく理屈で理解できます

ネイティブの感覚:出会いと別れの挨拶で見る違い

(It's) nice to meet you. ── 初対面の最初の挨拶。「これから」お会いできてうれしい。

(It was) nice meeting you. ── 別れ際の挨拶。「実際に」お会いできてうれしかった。

to不定詞は「これからの出会い」に目を向け、動名詞は「具体的に交流した経験」を振り返っています。この違いが、すべての動名詞 vs 不定詞の使い分けの根底にあります。

2動名詞のみを目的語にとる動詞

以下の動詞は動名詞(-ing)のみを目的語にとります。to不定詞は使えません。

文法ルール:動名詞のみを目的語にとる主な動詞(リアリティ動詞)

admit(認める)/ avoid(避ける)/ consider(よく考える)/ deny(否認する)/ enjoy(楽しむ)/ escape(逃れる)/ finish(終える)/ give up(あきらめる)/ imagine(想像する)/ mind(嫌がる)/ miss(しそこなう)/ postpone(延期する)/ practice(練習する)/ resist(抵抗する)/ stop(やめる)/ suggest(提案する)

※ これらの動詞は「すでに起きている(起きた)行為」を対象にする。だから「リアリティ」の動名詞と相性がよい。
例文で確認
Just stop calling me!
とにかく私に電話するのをやめてよ!(実際に電話がかかっている状況)
He denied stealing the money.
彼はそのお金を盗んだことを否定した。(すでに起きた行為について否定)
You should avoid eating too much sugar.
糖分の摂りすぎは避けるべきだ。(具体的な行為を避ける)
ネイティブの感覚:なぜ「リアリティ動詞」は動名詞をとるのか

「楽しむ(enjoy)」── 実際にやっている行為があるから楽しめる。

「終える(finish)」── 実際にやっていた行為があるから終えられる。

「やめる(stop)」── 実際にやっている行為があるからやめられる。

「避ける(avoid)」── 具体的な行為が想定されているから避けられる。

どの動詞も「行為がリアルに存在していること」を前提にしているのです。まだ起きていない「これから」の行為は、楽しむことも終えることもやめることもできません。

3to不定詞のみを目的語にとる動詞

以下の動詞はto不定詞のみを目的語にとります。動名詞は使えません。

文法ルール:to不定詞のみを目的語にとる主な動詞(これから動詞)

agree(同意する)/ afford(余裕がある)/ decide(決める)/ demand(要求する)/ expect(予期する)/ fail(しそこなう)/ hope(望む)/ learn(身につける)/ manage(なんとかする)/ mean(本気でするつもり)/ offer(申し出る)/ plan(計画する)/ prepare(準備する)/ pretend(ふりをする)/ promise(約束する)/ refuse(拒む)/ want(したい)/ wish(したい)

※ これらの動詞は「これから先のこと」に目を向けている。だから「これから」の to不定詞と相性がよい。
例文で確認
I promise not to tell a lie.
うそをつかないと約束します。(これから先のことについて約束)
I hope to see you again.
またお目にかかりたいです。(これから先の再会を望む)
She decided to visit him as often as possible.
彼女はできるだけ頻繁にお見舞いに行こうと決めた。(これからの計画)
ここが本質:「これから動詞」の共通感覚

「(これから〜することに)同意する」「(これから〜することを)約束する」「(これから〜することを)望む」「(これから〜することを)決める」── どれも「まだ実現していない未来の行為」に目を向けています

「これから」のイメージをもつ to不定詞が、これらの動詞にぴったりなのです。

4どちらでも意味が変わらない動詞

like / love / hate / start / begin / continue などの動詞は、動名詞でも to不定詞でも目的語にとることができ、大きな意味の違いはありません

例文で確認
I like playing tennis. / I like to play tennis.
テニスをするのが好きだ。(どちらでもOK)
It started raining. / It started to rain.
雨が降り始めた。(どちらでもOK)
ワンポイント:微妙なニュアンスの違い

大きな意味の違いはありませんが、厳密には動名詞のほうが「実際にやっている感覚」、to不定詞のほうが「一般論・習慣」のニュアンスが漂います。

I like playing tennis.(テニスをしている実感がある)

I like to play tennis.(テニスをするということが好きだ ── やや一般的)

試験ではどちらを選んでも正解になることがほとんどです。

5意味が大きく変わる動詞(超重要)

以下の動詞は、動名詞と to不定詞のどちらを目的語にするかで意味が大きく変わります。 入試で最も問われるポイントです。

動詞 動名詞(-ing)= 過去・現実 to不定詞(to do)= これから
remember (過去に)〜したことを覚えている 忘れずに(これから)〜する
forget (過去に)〜したことを忘れる (これから)〜するのを忘れる
regret (過去に)〜したことを後悔する 残念ながら(これから)〜する
try (実際に)〜してみる (これから)〜しようとする
stop 〜することをやめる 〜するために立ち止まる *
mean 〜することを意味する 〜するつもりである
go on 〜し続ける 続けて(次に)〜する
need 〜される必要がある(受動) 〜する必要がある

* stop to do の to不定詞は目的語ではなく副詞的用法(目的)。

remember / forget の使い分け

例文で確認
I'll never forget seeing the beautiful sea from the hill.
丘から美しい海を見たことを決して忘れないだろう。(過去の経験を忘れない)
I forgot to stop by the supermarket.
スーパーに立ち寄るのを忘れた。(これからやるべきことをやり忘れた)
Remember to take your books back to the library.
忘れずに本を図書館に返しなさい。(これからやること)

regret の使い分け

例文で確認
I regret lending him my dictionary.
彼に辞書を貸したことを後悔している。(過去の行為を後悔)
I regret to say that I cannot join your team.
残念ながら、あなたのチームに参加できません。(これから言うことが残念)

try / stop の使い分け

例文で確認
He tried to impress the girl with his courage.
彼は少女に勇気があるところを印象づけようとした。(努力・試み)
I'm sorry. I didn't mean to step on your foot.
ごめんなさい。あなたの足を踏むつもりはなかったんです。
He stopped talking to her.
彼は彼女と話すのをやめた。(行為の中止)
He stopped to talk to her.
彼は彼女と話すために立ち止まった。(目的を表す副詞的用法)
落とし穴:stop to do は「目的語」ではない

stop doing の doing は stop の目的語(〜することをやめる)ですが、stop to do の to do は目的語ではなく、副詞的用法の不定詞(〜するために)です。

stop は動名詞のみを目的語にとる動詞です。to不定詞が続くときは「目的(〜するために)」を表しています。

need doing の特殊な用法

例文で確認
After playing with sand, your hands need washing.
砂遊びの後は、手を洗う必要がある。(= need to be washed:受動の意味)
My watch needs to be repaired.
私の時計は修理される必要がある。(to不定詞で書くと受動態になる)

6つながりマップ

動名詞と不定詞の使い分けを学んだら、次のトピックへ進みましょう。

  • → G-6-3 動名詞を用いた慣用表現:前置詞 to + 動名詞、It is no use doing など、入試頻出の慣用表現を網羅します。
  • → G-6-1 動名詞の基本用法:主語・目的語・補語としての動名詞、意味上の主語を復習したい場合はこちらへ。
  • → G-5 不定詞:to不定詞の名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法の全体像を確認しましょう。

📋まとめ

  • 動名詞 = 「リアリティ」(具体的に起きている行為)/ to不定詞 = 「これから」(未実現の行為)
  • 動名詞のみをとる動詞:enjoy, finish, stop, mind, avoid, deny, consider, imagine, suggest, practice など
  • to不定詞のみをとる動詞:hope, decide, promise, plan, want, wish, agree, offer, refuse, expect など
  • like / love / hate / start / begin / continue はどちらでもOK(大きな意味の違いなし)
  • 意味が変わる動詞は超重要:remember, forget, regret, try, stop, mean, go on, need
  • remember / forget:動名詞 = 過去の経験、to不定詞 = これからやること
  • stop doing =やめる / stop to do =するために立ち止まる(to doは副詞的用法)

確認テスト

Q1. 動名詞のみを目的語にとる動詞と to不定詞のみを目的語にとる動詞、それぞれの共通するイメージを説明してください。

▶ クリックして解答を表示動名詞のみをとる動詞(リアリティ動詞)は「すでに起きている行為」を前提にする。to不定詞のみをとる動詞(これから動詞)は「まだ実現していない未来の行為」に目を向ける。

Q2. 次の2文の意味の違いを説明してください。
A) I remembered locking the door.
B) I remembered to lock the door.

▶ クリックして解答を表示A)「ドアに鍵をかけたことを覚えている」(過去に実際にした行為の記憶)。B)「忘れずにドアに鍵をかけた」(これからやるべきことを忘れなかった)。

Q3. 次の2文の意味の違いを説明してください。
A) He stopped smoking.
B) He stopped to smoke.

▶ クリックして解答を表示A)「彼はタバコを吸うのをやめた」(stop + 動名詞 = 行為の中止)。B)「彼はタバコを吸うために立ち止まった」(stop + to不定詞 = 目的を表す副詞的用法)。

Q4. need doing はどういう意味になりますか。to不定詞で書きかえてください。
例:This room needs cleaning.

▶ クリックして解答を表示「〜される必要がある」(受動の意味)。This room needs to be cleaned. と書きかえられる。動名詞 cleaning が受動の意味を含む特殊な用法。

9入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

6-2-1 A 基礎 動名詞のみをとる動詞 空所補充

The doctor has advised me not to eat eggs anymore, so I've stopped (  ) them.

  • ① to have bought
  • ② buying
  • ③ for buying
  • ④ to buy
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② buying

解説

判断のポイント:文意は「卵を買うのをやめた」。stop doing は「〜することをやめる」。

stop は動名詞のみを目的語にとるので ② buying が正解です。④ to buy を選ぶと「買うために立ち止まった」となり文意が通りません。

「医者がこれ以上卵を食べないようにと忠告したので、私は卵を買うのをやめた」

B 発展レベル

6-2-2 B 発展 forget の使い分け 空所補充

I forgot (  ) by the supermarket and so have nothing to eat now.

  • ① to stop
  • ② stopping
  • ③ to have stopped
  • ④ having stopped
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

① to stop

解説

判断のポイント:「スーパーに立ち寄るべきだったのに忘れた」→ やるべきことをやり忘れた → forget to do

forget doing は「過去にしたことの記憶を忘れる」。② stopping を選ぶと「スーパーに立ち寄ったのにその記憶を忘れた」となり、and以下の「食べるものが何もない」とつじつまが合いません。

「スーパーに立ち寄るのを忘れたので、今は食べるものが何もない」

C 応用レベル

6-2-3 C 応用 mean の使い分け 空所補充

I'm sorry. I didn't mean (  ) on your foot.

  • ① step
  • ② stepping
  • ③ to stepping
  • ④ to step
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

④ to step

解説

判断のポイント:文意は「足を踏むつもりはなかった」。mean to do =「〜するつもりである」。

mean doing は「〜することを意味する」。② stepping を選ぶと「足を踏むことを意味しなかった」という意味になり不自然です。

「ごめんなさい。あなたの足を踏むつもりはなかったんです」

得点の差がつくポイント
  • mean to do(〜するつもり)と mean doing(〜を意味する)の区別は入試頻出
  • I didn't mean to ... は日常会話でもよく使われる謝罪表現