第17章 前置詞

前置詞の基礎
─ 名詞の「何が問題か」を指定する小さな道具

on the table、in Japan、with us ── 前置詞は名詞の前に置かれ、「その名詞の何が問題なのか」を指定します。
日本語の助詞(て・に・を・は)と似ているようで実は違う、英語独自のしくみを理解しましょう。
前置詞のイメージを掴めば、英語の表現力は飛躍的に広がります。

1前置詞とは何か ─ 名詞を「指定」する道具

英語では、名詞だけでは「その名詞の何が問題なのか」が伝わりません。 たとえば「the table」だけでは、テーブルの上なのか、下なのか、横なのかわかりません。 そこで登場するのが前置詞です。

💡 ここが本質:前置詞 = 名詞の「何が問題か」を指定する

前置詞 + 名詞(句)のカタマリを前置詞句と呼びます。

前置詞は名詞のに置かれ、「テーブル」ではなく「テーブルの上」のように、名詞が文中で果たす役割を指定します。

前置詞の後ろの名詞は「前置詞の目的語」と呼ばれ、代名詞の場合は目的格(me, him, her, us, them)を使います。

📝 例文で確認
There's an apple on the table.
リンゴが1つテーブルの上にある。(on が「テーブル」→「テーブルの上」に指定)
Come and have some fun with us.
こっちに来て私たちと一緒に楽しみましょう。(with が「私たち」→「私たちと一緒に」に指定)
The hurricane is going towards New Orleans.
そのハリケーンはニューオリンズに向かっている。(towards が方向を指定)
📏 文法ルール:前置詞句の基本構造

前置詞 + 名詞(句)= 前置詞句

代名詞が目的語になる場合は、必ず目的格を使う。

※ with us(○) / with we(×)
※ for him(○) / for he(×)

2前置詞句の働き ─ 説明ルール

前置詞句は文中でどのような働きをするのでしょうか。 英語の大原則である「後ろに置けば説明になる」というルールがここでも活きています。

📝 前置詞句の4つの説明パターン
There are a lot of Americans in Japan.
日本にはたくさんのアメリカ人がいる。(文全体の場所を説明)
I can't sleep at night.
私は夜、眠れない。(文全体の時を説明)
The hurricane is going towards New Orleans.
そのハリケーンはニューオリンズに向かっている。(動詞の方向を説明)
All the students in my class enjoyed the school festival.
私のクラスの全生徒が学園祭を楽しんだ。(名詞 students を説明)
前置詞句の働き 説明する対象
場所の修飾 文全体 in Japan / at the station
時の修飾 文全体 at night / in the morning
動詞の修飾 動詞 going towards ~ / look at ~
名詞の修飾 名詞 the students in my class
🧠 ネイティブの感覚:前置詞句は「指定」としても使われる

実践レベルの英語では、前置詞句がハイフン(-)でつながり、形容詞のように名詞の前に置かれて「指定」として働くケースもあります。

behind-the-scenes negotiation(舞台裏の交渉)

under-the-table dealings(裏取引)

単なる「交渉」ではなく「舞台裏の交渉」と、その種類を指定しています。

3前置詞の目的語になる要素

前置詞の後ろには名詞だけでなく、さまざまな要素が置けます。 「意味さえ通ればどんな要素でもかまわない」と考えましょう。前置詞の後ろに来るものは、すべて名詞的なニュアンスを帯びます。

目的語の種類 意味
名詞 on the table テーブルの上に
代名詞 with us 私たちと一緒に
形容詞 from bad to worse 悪い状態からさらに悪い状態へ
副詞 until quite recently かなり最近まで
前置詞句 from under the sofa ソファの下から
動名詞 by calling me a liar 私をうそつきと呼ぶことで
疑問詞節 on how you make decisions どのように決断するかに
that節 in that they use fire 火を使うという点において
⚠️ 落とし穴:前置詞の後ろに「不定詞」は使えない

前置詞の後ろに to不定詞を置くことは原則としてできません。動詞の意味を入れたい場合は動名詞を使います。

✕ 誤:She is good at to play tennis.

○ 正:She is good at playing tennis.

ただし look forward to doing の to は前置詞であり、不定詞の to ではないので、後ろには動名詞が来ます。

4前置詞と日本語の助詞は違う

日本語には「て・に・を・は」などの助詞があり、前置詞と同じような働きをしているように見えます。 しかし、日本語からの類推で前置詞を理解しようとすると、大きなミスにつながります

🧠 ネイティブの感覚:前置詞句は「カタマリ」で後ろから説明する

英語は語順のことばです。主語の位置に置かれるだけで主語として機能します。

There are a lot of Americans in Japan. という文は、「日本」ではなく、in Japan(日本の中)というカタマリが文全体を後ろから説明していると考えるべきです。

翻訳の過程で「に」が出てくるだけであり、in = 「に」ではないのです。前置詞句のカタマリを、説明したい語句の後ろに並べる意識が重要です。

📝 「in = に」ではない例
She lives in Kyushu.
彼女は九州に住んでいる。(in = 「〜の中」。「に」は日本語訳の都合)
She looks cute in the school uniform.
彼女は制服を着るとかわいく見える。(in = 「〜の中に入って」。制服の中に体が入っているイメージ)
I said that in English.
私はそれを英語で言った。(in = 「〜という手段の中で」。「で」と訳す)

5句動詞 ─ 動詞 + 前置詞のコンビネーション

前置詞は名詞と結びつくだけでなく、動詞と結びついて句動詞(phrasal verbs)を作ります。 会話では、難しい動詞1語よりも、平易な動詞による句動詞が好まれます。

句動詞の3つのタイプ

タイプ 構造
全体で自動詞 自動詞 + 副詞 show up(現れる)/ break down(壊れる)
全体で他動詞1 自動詞 + 前置詞 run into(ばったり出会う)/ look for(探す)
全体で他動詞2
(分離可能型)
他動詞 + 副詞 put on(着る)/ put off(延期する)/ find out(見つけ出す)
🔬 ワンポイント:分離可能型のルール

分離可能型(他動詞 + 副詞)では、目的語が代名詞の場合、必ず分離して間に入れます。

○ put it on / × put on it

○ put the sweater on = put on the sweater(名詞ならどちらもOK)

副詞が目的語の状態を説明しているため、分離が基本です。put the sweater on = 「the sweater が on(身についている)となるように put する」。

🧠 ネイティブの感覚:イメージの合成でわかる句動詞

句動詞の意味は「暗記」ではなく、イメージの合成で理解できるものが多くあります。

look for:look(目をやる)+ for(求めて)→「探す」

put off:本来の日程から off(離れたところに)put(置く)→「延期する」

find out:find(見つける)+ out(外に出てくる)→「見つけ出す」

run into:run + into(中にめり込む = 衝突)→「ばったり出会う」

6つながりマップ

前置詞の基礎を学んだら、次のトピックへ進みましょう。

  • → G-17-2 時を表す前置詞 at / on / in:at(時点)、on(日)、in(月・年・季節)の基本を学ぶ。前置詞のイメージが直接活きます。
  • → G-17-3 場所を表す前置詞 at / in / on:at(地点)、in(内部)、on(接触)の基本を学ぶ。空間的なイメージを掴みましょう。
  • → G-17-7 主要前置詞のイメージ:at / in / on / to / for / of / by / with / from / about などの核心的イメージを総覧します。
  • → G-6 動名詞:前置詞の目的語には動名詞を使う。不定詞は使えない。この知識は動名詞の章と直結します。

📋まとめ

  • 前置詞は名詞の前に置かれ、その名詞の「何が問題か」を指定する
  • 前置詞句(前置詞 + 名詞)は、文全体・動詞・名詞を後ろから説明する
  • 前置詞の目的語になれるのは、名詞・代名詞・動名詞・形容詞・副詞・疑問詞節・that節など多彩な要素
  • 前置詞の後ろに不定詞は原則使えない。動名詞を使う
  • 日本語の助詞と前置詞は別物。前置詞句をカタマリで捉える意識が大切
  • 句動詞は動詞 + 前置詞/副詞のコンビネーション。イメージの合成で理解できる

確認テスト

Q1. 前置詞の基本的な働きを一言で説明してください。

▶ クリックして解答を表示名詞の前に置かれ、その名詞の「何が問題か」を指定する。前置詞 + 名詞のカタマリ(前置詞句)で説明の働きをする。

Q2. 前置詞の後ろに代名詞を置く場合、どの格を使いますか。

▶ クリックして解答を表示目的格を使う。例:with us(○)/ with we(×)、for him(○)/ for he(×)。前置詞の後ろの名詞は「前置詞の目的語」と呼ばれるため。

Q3. 次の英文の誤りを正してください。
She is good at to play tennis.

▶ クリックして解答を表示to play → playing。前置詞の後ろに不定詞は使えない。動名詞(playing)を使う。正:She is good at playing tennis.

Q4. 分離可能型の句動詞で、目的語が代名詞の場合のルールを説明してください。

▶ クリックして解答を表示代名詞は必ず動詞と副詞の間に入れる(分離する)。例:put it on(○)/ put on it(×)。名詞の場合はどちらの語順でもよい。

9入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

17-1-1 A 基礎 前置詞の目的語 空所補充

I'm looking forward to (  ) you again.

  • ① see
  • ② seeing
  • ③ seen
  • ④ to see
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② seeing

解説

判断のポイント:look forward to の to は前置詞であり、不定詞の to ではありません。

前置詞の後ろには名詞・動名詞が来るので、② seeing(動名詞)が正解です。① see(原形)や ④ to see(不定詞)は前置詞の目的語にはなれません。

「またあなたに会えることを楽しみにしています。」

B 発展レベル

17-1-2 B 発展 句動詞 語順整序

次の語句を並べ替えて、英文を完成させなさい。

「彼女はそのニュースを偶然知った。」

She ( found / about / out / the news ) by chance.

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

She found out about the news by chance.

解説

判断のポイント:find out は「見つけ出す・知る」という句動詞です。

find out about A で「Aについて知る」という意味になります。found out about the news の語順が正解です。

C 応用レベル

17-1-3 C 応用 前置詞句の働き 空所補充

Humans are different from other animals (  ) that they use fire.

  • ① for
  • ② on
  • ③ in
  • ④ at
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ in

解説

判断のポイント:in that ... は「...という点において」という意味の慣用表現です。

前置詞 in の後ろに that節が来る形で、「火を使うという点において、人間は他の動物と異なる」という意味になります。前置詞の後ろに節(that節)が来る珍しいパターンの1つです。

得点の差がつくポイント
  • in that は「〜という点において」を意味する頻出表現
  • 前置詞の目的語は名詞・動名詞だけでなく、that節が来る場合もある