第14章 名詞

代名詞の基本
─ 人称代名詞と it の特殊用法

代名詞は名詞の代わりをする短い単語。
特に it は「受ける」万能語として、状況・天候・時間からit...to構文まで幅広く活躍します。

1人称代名詞 ── 文脈を「受ける」単語

代名詞は名詞の代わりをする短い単語です。文脈に表れた事物を「受けて」発言を展開します。

本質を掴む:代名詞=「受ける」単語

人称代名詞は前の文脈に登場した人やモノを she(彼女)、it(それ)、they(彼ら)と「受けて」話を展開するための道具です。同じ名詞を何度も繰り返さずに済むようになります。

人称代名詞の一覧
単数複数
1人称I(私)we(私たち)
2人称you(あなた)you(あなたがた)
3人称he / she / itthey(彼ら・それら)

※ they は人・モノを問わず複数を受ける代名詞です。

例文で確認
I met Mary yesterday. She was very happy.
昨日メアリーに会った。彼女はとても嬉しそうだった。
I bought a new laptop. It works really well.
新しいノートパソコンを買った。それはとてもよく動く。

2格の変化 ── 主格・所有格・目的格

人称代名詞は文中での働きによって形を変えます。これを「格変化」と言います。

人称代名詞の格変化表
主格(〜は)所有格(〜の)目的格(〜を・に)
IImyme
youyouyouryou
hehehishim
shesheherher
itititsit
weweourus
theytheytheirthem

※ its(itの所有格)と it's(it is の短縮形)をしっかり区別しましょう。

主格 ── 文のテーマ

主語は文のテーマ。そこに用いられるのが主格です。

例文で確認
She speaks three languages.
彼女は3つの言語を話す。

所有格 ── 「〜の」と指定する力

所有格は後ろの名詞を「私の」「彼の」と指定する表現です。

ネイティブの感覚:所有格の「強さ」

my friend と a friend of mine は日本語訳が同じでもニュアンスが違います。my friend は指定表現で「ほかならぬ私の友だち」という親しさ・近さが強く感じられます。一方 a friend of mine は「何人かいる友だちの1人」という軽い響きです。

例文で確認
Jerry, this is my friend Sue.
ジェリー、こちらは私の友だちのスーです。(親しさが伝わる)
Sue is a friend of mine.
スーは私の友だちです。(友だちの1人)

目的格 ── 動詞・前置詞の後ろ

目的格が使われる典型的な場所は、動詞・前置詞の目的語の位置。目的格には「指す」意識が伴っています。

例文で確認
I know him.
私は彼のことを知っている。
I went fishing with them.
私は彼らと釣りに行った。
Who forgot to turn off the lights? — Oops! Me.
誰が電気を消し忘れたの? ── おっと、私だよ。

3所有代名詞と再帰代名詞(-self形)

所有代名詞 ── 「〜のもの」

所有代名詞は「〜のもの」を意味し、単独で使えます。所有格が名詞の前に置く形(your tennis racket)であるのに対し、所有代名詞は名詞なしで使います。

所有代名詞の一覧
所有格所有代名詞
mymine
youryours
hishis
herhers
itsits
ourours
theirtheirs
例文で確認
Is this your tennis racket? — No, mine is on the bench.
これはあなたのテニスラケット? ── いえ、私のはベンチの上です。

再帰代名詞(-self形) ── 「〜自身」

-self 形は、動作が行為者自身に返ってくることを示します。

再帰代名詞の一覧
単数複数
myselfourselves
yourselfyourselves
himself / herself / itselfthemselves
例文で確認
I cut myself.
(自分の指を)切ってしまった。
I myself did it.
ほかの誰でもなく私自身がやった。(強調)
Just relax and make yourself at home.
気楽にくつろいでください。
Help yourself to the food on the table.
テーブルの料理は自分で取ってくださいね。
覚えておきたい -self の決まり文句

make oneself understood(自分を理解してもらう)/ make oneself at home(くつろぐ)/ help oneself to ...(自分で〜を取る)/ by oneself(1人で)/ enjoy oneself(楽しむ)

4it の基本 ── 万能の「受ける」単語

it はほかの人称代名詞と同じように「受ける」単語です。he や she のような性別指定がなく、さまざまな内容を受けることができる万能語です。

例文で確認
I bought a new phone. It has a great camera.
新しいスマホを買った。カメラがすごくいい。(前の文脈のモノを受ける)
I broke the vase. I'm sorry about it.
花瓶を割ってしまった。ごめんなさい。(やってしまったことを受ける)
ネイティブの感覚:it と this / that の違い

it は this や that とは大きく異なります。this / that は目の前にあるものを「指す」単語ですが、it は前の文脈を「受ける」単語です。

What is that? — It's a can opener.(相手の that を受けて答えている)
What is that? — That's a can opener.(自分でもう一度「指し直し」ている)

it は日本語では訳さないほうが自然なことが多いのは、it が「受けるキモチ」に対応しているからです。

5it の特殊用法 ── 状況・天候・it...to構文

状況を受ける it

it は身の回りに感じられる状況を受けることができます。

例文で確認
It's dark here.
ここ暗いね。(今いる場所の状況を受ける)
How's it going, Chris?
クリス、調子はどう?(相手の状況を漠然と受ける)

天候・時間・距離の it

天候・時間・距離を表す文にも it が使われますが、これも「状況を受ける」使い方の延長です。

例文で確認
It's sunny today.
今日はいい天気だ。(空の状況を受ける)
It's five o'clock.
5時です。(流れる時を受ける)
It's five kilometers from here to the station.
ここから駅まで5キロです。(道のりの状況を受ける)

it + to不定詞 / 節 ── あとから説明する

まず思い浮かべた状況を it で受けて文を始め、あとから to不定詞や that節で it の内容を説明するパターンです。

本質を掴む:it...to構文の発想

It is difficult to speak English. ── まず思い浮かべた状況を it で受けて「難しいんだよ」と始め、何が難しいのかを to speak English で説明する。「言い切ってから説明は後回し」という英語のリズムそのものです。

例文で確認
It is difficult to speak English.
英語を話すのは難しい。
It takes less than 7 hours to get to Singapore.
シンガポールへ行くには7時間もかからない。
It is surprising that she shouted at him.
彼女が彼を怒鳴ったのは驚きだ。
注意:It is ... of 人 to ... の型

人物に対する評価を行う「〜するなんて…だ」には of を使います。

It's so kind of you to lend me a hand.(手を貸してくれるなんて親切だ)

この型は kind, brave, careless, clever, foolish, rude, polite など人物評価の形容詞とともに使います。for ではなく of を使うのがポイントです。

まとめ

  • 人称代名詞は文脈に登場した名詞を「受ける」単語。I / you / he / she / it / we / they。
  • 格変化:主格(〜は)・所有格(〜の)・目的格(〜を・に)で形が変わる。
  • 所有代名詞(mine, yours 等)は「〜のもの」を意味し単独で使う。
  • 再帰代名詞(-self 形)は動作が自分に返ることを示す。
  • it の基本は前の文脈を「受ける」万能語。this / that の「指す」とは異なる。
  • it の特殊用法:状況・天候・時間・距離を受ける。it...to / it...that で「説明は後回し」。

確認テスト

Q1. 次の( )に入る適切な代名詞は? ── I met Tom. ( )was very happy.

▶ 答えを見るHe ── 前の文脈の Tom を「受ける」ので、男性の主格 He を使います。

Q2. its と it's の違いは?

▶ 答えを見るits は it の所有格(〜の)。it's は it is / it has の短縮形。アポストロフィの有無が決め手です。

Q3. 「気楽にくつろいでください」を英語で言うと?

▶ 答えを見るMake yourself at home. ── make oneself at home は「自分をくつろいだ状態にする」という意味の決まり文句です。

Q4. It is difficult to speak English. の it は何を指している?

▶ 答えを見るit は後ろの to speak English の内容を「受けて」います。まず思い浮かべた状況を it で始め、あとから to不定詞で内容を説明するパターンです。

📝入試問題演習

問1Level A代名詞の格

次の空欄に入る最も適切なものを選びなさい。

Jerry, this is ( ) friend Sue.

  • ① I
  • ② my
  • ③ me
  • ④ mine
▶ 解答と解説を見る

解答

② my

解説

空欄の後ろに名詞 friend があるので、名詞の前に置いて「〜の」と指定する所有格 my が正解です。mine は所有代名詞で単独で使うもの(= my friend)なので不適切。

問2Level Bit の用法

次の英文の下線部 it が指す内容として最も適切なものを選びなさい。

It is tough for me to lose 2 kilos.

  • ① 天候
  • ② to lose 2 kilos の内容
  • ③ 前の文の名詞
  • ④ 特に意味はない
▶ 解答と解説を見る

解答

② to lose 2 kilos の内容

解説

これは it...to 構文で、it が後ろの to lose 2 kilos(2キロ減量すること)の内容を受けています。まず It is tough(大変だ)と状況を述べ、何が大変かを to不定詞で説明する英語のリズムです。

問3Level Cit is...of 人 to

次の空欄に入る最も適切な前置詞を答えなさい。

It's very generous ( ) you to give up so much of your time.

▶ 解答と解説を見る

解答

of

解説

It is ... of 人 to ... は人物評価の型です。generous(寛大な)は人の性格を評価する形容詞なので of を使います。of you で「あなたは寛大だ」というカタマリを作り、何をしたからそう評価したのかを to不定詞で説明しています。for を使う場合は行為の主体を示すだけで、人物評価のニュアンスは含まれません。

得点のポイント
  • 人物評価の形容詞(kind, brave, careless, clever, foolish, rude, polite, generous 等)→ of
  • 行為の主体を示すだけ(difficult, easy, possible, necessary 等)→ for