第13章 強調・倒置・省略・話法
強調構文と強調表現
─ 「引っ張り出す」感覚で伝えたいことを際立たせる
「昨日ネコを踏んだのは、私の妹なんだよ」── 日本語でも「~のは…だ」と言い換えることで、特定の情報を際立たせることがあります。
英語の強調構文(It is ... that ~)は、まさにこの「引っ張り出し」の感覚。
さらに do / does / did を使った動詞の強調も加えて、英語の「強調テクニック」を身につけましょう。
1強調構文とは ─ It is ... that ~ の基本
英語で文の一部を特に強調したいとき、その要素を It is [was] ... that ~ ではさんで前に「引っ張り出す」ことができます。これが強調構文(分裂文 / cleft sentence)です。
📏 文法ルール:強調構文の基本形
It is [was] + 強調したい語句 + that + 残りの文
「~なのは…だ」「…したのは~だ」
※ 元の文から強調したい語句を抜き出し、It is [was] と that ではさむ。
※ that 以下には、強調した語句が抜けた不完全な文が続く。
🧠 ネイティブの感覚:「引っ張り出し」でスポットライトを当てる
ネイティブは強調構文を「特殊な文法」として意識しているわけではありません。単に語順通りに文を作っているだけです。
まず It was my little sister(妹だったんだよ)と主要メッセージを言い切り、次に that 以下で「何が妹だったのか」を説明する── この「先に結論、あとから説明」という英語の基本リズムそのものです。
📝 例文で確認:元の文と強調構文
【元の文】 My little sister stepped on the cat yesterday.
It was my little sister that stepped on the cat yesterday.
昨日ネコを踏んだのは、私の妹なんだよ。(主語を強調)
It was the cat that my little sister stepped on yesterday.
私の妹が昨日踏んだのは、ネコなんだよ。(目的語を強調)
It was yesterday that my little sister stepped on the cat.
私の妹がネコを踏んだのは、昨日なんだよ。(副詞を強調)
2強調構文のさまざまなパターン
強調構文で強調できるのは名詞(主語・目的語)と副詞(句・節)です。動詞や形容詞は強調できません。
「人」を強調する場合 ─ that / who
強調する語句が「人」の場合は、that の代わりに who(目的格なら whom)を使うこともできます。
📝 例文で確認
It was Mike that [who] found this letter in her room.
彼女の部屋でこの手紙を見つけたのはマイクだった。
副詞節を強調する場合
because 節や when 節などの副詞節もまるごと強調できます。
📝 例文で確認
It was because he was ill that we gave up traveling.
私たちが旅行をやめたのは、彼が病気だったからだ。
慣用表現:It is not until ... that ~
It is not until ... that ~ は「…して初めて~する」という意味の頻出慣用表現です。「…するまでは~しない」が直訳です。
📝 例文で確認
It was not until two hours after the accident that the police arrived.
事故があって2時間経って初めて警察が到着した。
🔬 ワンポイント:Not until ... の倒置形
It is not until ... that ~ から It is と that を外すと、否定の副詞句 Not until ... が文頭に来るため、倒置形になります。
Not until two hours after the accident did the police arrive.
倒置については次の記事(G-13-2)で詳しく学びます。
3強調構文の疑問文
強調構文で疑問詞を強調する場合は、疑問詞を文頭に置き、is [was] it that ...? という語順になります。
📏 文法ルール:強調構文の疑問文
疑問詞 + is [was] it that ...?
「いったい(疑問詞)…なのか」
※ 普通の疑問文に比べて、疑問詞に「いったい」という強調のニュアンスが加わる。
📝 例文で確認:普通の疑問文 vs 強調構文の疑問文
Who found this letter?(普通の疑問文)
だれがこの手紙を見つけたのか。
Who was it that found this letter?(強調構文の疑問文)
この手紙を見つけたのはいったいだれだったのか。
What was it that Mike found in her room?
彼女の部屋でマイクが見つけたのはいったい何だったのか。
When was it that Mike found this letter?
マイクがこの手紙を見つけたのはいったいいつだったのか。
4強調構文と形式主語構文の見分け方
強調構文の It is ... that ~ と、形式主語の It is ... that ~ は見た目がそっくりです。入試では両者の見分けが頻出です。
💡 ここが本質:that 以下が「完全な文」か「不完全な文」か
強調構文:that 以下の文は、強調された語句が抜けているため不完全な文(主語や目的語などが欠けている)。
形式主語構文:that 以下の文は、すべての要素がそろった完全な文。
また、強調構文は It is [was] と that を取り除いても、元の完全な文に戻せるという特徴があります。
📝 例文で確認:見分け方
It was my sister that stepped on the cat.(強調構文)
→ that 以下は stepped on the cat(主語が欠けている = 不完全)
→ It was と that を外すと My sister stepped on the cat. に戻せる。
It was surprising that my sister stepped on the cat.(形式主語構文)
→ that 以下は my sister stepped on the cat(完全な文)
→ It was と that を外すと Surprising my sister stepped on the cat. となり、文として成立しない。
⚠️ 落とし穴:「It is ... that は全部強調構文」と思い込む
It is ... that ~ を見たら、まず that 以下が完全な文かどうかをチェックしましょう。
✕ 誤判断:It is natural that he should be angry. を強調構文と判断
○ 正:that 以下は he should be angry で完全な文 → 形式主語構文(「彼が怒るのは当然だ」)
5do / does / did による動詞の強調
動詞を強調したいとき、強調構文は使えません。その代わりに、do / does / did を動詞の原形の前に置くことで、「本当に~する」「確かに~した」という強調の意味を加えることができます。
📏 文法ルール:do による動詞の強調
S + do / does / did + 動詞の原形
「本当に~する / 確かに~した / ぜひ~してください」
※ do は主語・時制に応じて does / did に変化する。
※ do は強く発音する。あとに続く動詞は必ず原形。
📝 例文で確認
Please do help yourself to the food and drinks.
どうか遠慮なく食べ物やお飲み物をお召し上がりくださいね。
She thinks I don't trust her. But I do trust her.
彼女は私が信頼していないと思っているようだが、本当に信頼している。
I do regret not learning to play the piano when I was a child.
子どものころにピアノを弾けるようにならなかったことを、本当に悔やんでいます。
He does support me.
彼は本当に私を支えてくれているよ。
🧠 ネイティブの感覚:相手の思惑を「はねのける」do
do による強調は、相手や第三者の思い込みに対して「いや、実際にはこうなんだよ」と反論するときによく使われます。
たとえば "She thinks I don't trust her. But I do trust her." は「信頼していないと思われているけど、本当は信頼しているんだ」というはねのけの感覚です。
6その他の強調表現
疑問詞の強調 ─ on earth / in the world
疑問詞の直後に on earth や in the world を置くと、「いったい」と疑問の意味を強めることができます。
📝 例文で確認
What on earth are you doing?
いったい何をしているんだ。
Where in the world have you been?
いったいどこにいたんだ。
the very + 名詞 ─ 「まさにその~」
形容詞として使われる very は、名詞を強調して「まさにその~」「ちょうどその~」という意味を表します。
📝 例文で確認
This is the very book that I wanted to buy.
これは私が買いたかった、まさにその本です。
He appeared at that very moment.
まさにそのとき、彼が現れた。
否定の強調
not にさまざまな語句を組み合わせて、否定を強調することができます。
| 表現 |
意味 |
| not ... at all |
まったく~ない |
| not ... in the least |
少しも~ない |
| not ... by any means |
決して~ない |
| not ... whatsoever |
まったくもって~ない |
7つながりマップ
強調構文と強調表現を学んだら、次のトピックへ進みましょう。
- → G-13-2 倒置:否定語句が文頭に来る倒置は、強調の一手段。Not until ... の倒置形はここで学びます。
- → G-13-3 前置:文の要素を前に引っ張り出す「前置」も、焦点を当てるための操作です。強調構文と共通する発想があります。
- → G-7 関係詞:強調構文の that と関係代名詞の that は別物。両者の違いを意識しましょう。
- → G-6 不定詞・動名詞:形式主語構文の It is ... that ~ との見分けには、不定詞・that節の知識が役立ちます。
📋まとめ
- 強調構文:It is [was] + 強調したい語句 + that + 残りの文 ── 名詞や副詞句・節を「引っ張り出して」強調する
- 強調する語句が「人」なら that の代わりに who / whom も可
- 強調構文の疑問文は 疑問詞 + is [was] it that ...?(「いったい~」の強調ニュアンス)
- 形式主語構文との見分け方:that 以下が完全な文なら形式主語、不完全な文なら強調構文
- do / does / did + 動詞の原形で動詞を強調(「本当に~する」)
- その他の強調表現:on earth / in the world(疑問詞の強調)、the very + 名詞(「まさにその~」)
確認テスト
Q1. 強調構文で強調できる要素は何ですか。強調できない要素は何ですか。
▶ クリックして解答を表示強調できるのは名詞(主語・目的語)と副詞(句・節)。動詞や形容詞は強調できない。動詞を強調したい場合は do / does / did を使う。
Q2. 次の文を「昨日」を強調する強調構文に書き換えてください。
Tom met Mary at the station yesterday.
▶ クリックして解答を表示It was yesterday that Tom met Mary at the station.
Q3. 強調構文と形式主語構文を見分けるポイントは何ですか。
▶ クリックして解答を表示that 以下の文が不完全(主語や目的語が欠けている)なら強調構文。that 以下が完全な文なら形式主語構文。また、It is [was] と that を取り除いて元の完全な文に戻せるかどうかも判断基準になる。
Q4. 次の英文の空所を埋めてください。
She thinks I don't like her. But I ( )( ) like her.
▶ クリックして解答を表示do, really(または do だけでもOK)。do like her で「本当に好きだ」という動詞の強調になる。
9入試問題演習
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
A 基礎レベル
It is this question ( ) I want you to solve.
- ① what
- ② which
- ③ that
- ④ who
▶ クリックして解答・解説を表示
解説
判断のポイント:It is ... ( ) ... の形で、( ) 以下の文に目的語が欠けている(I want you to solve の目的語がない)ことから、強調構文と判断できます。
元の文は I want you to solve this question. で、目的語 this question を It is と that ではさんで強調しています。③ that が正解。
「君に解いてもらいたいのは、他でもなくこの問題なんだ」
B 発展レベル
( ) you went into the room with?
- ① Who she was
- ② What is she
- ③ Who it was that
- ④ Who was it that
▶ クリックして解答・解説を表示
解説
判断のポイント:文末に ? があるので疑問文です。強調構文の疑問文は「疑問詞 + is [was] it that ...?」の語順になります。
元の文は It was X that you went into the room with. で、X を疑問代名詞 who に変えて文頭に移動し、was it の疑問文の語順にしたのが ④ です。
「その部屋にあなたと一緒に入ったのは、いったいだれだったのですか」
得点の差がつくポイント
- ③ Who it was that は間接疑問(名詞節)の語順であり、直接疑問文には使えない
- 強調構文の疑問文では is [was] it の語順(疑問文の語順)になることを覚える
C 応用レベル
警察が到着したのは、事故があって2時間も経ってからでした。
It was ( )( )( )( )( )( )( ) arrived.
[ not / that / the accident / the police / two hours / until / after ]
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解答
It was not until two hours after the accident that the police arrived.
解説
判断のポイント:「…して初めて~する」= It is not until ... that ~ の慣用表現を使います。
「事故があって2時間経つまで警察が到着することはなかった」が直訳。not until two hours after the accident を It was と that ではさんで強調しています。
この文は Not until two hours after the accident did the police arrive. と倒置形に書き換えることもできます。
得点の差がつくポイント
- It is not until ... that ~ の形を知っているかどうかが鍵
- until のあとに「2時間 after 事故」という時間表現が入る構造を正しく組み立てられるか