代名詞の語法

itの特殊用法

形式主語のit、形式目的語のit、強調構文のit

1形式主語のit

形式主語itの本質
形式主語のitは、真の主語(that節や不定詞)を文末に置くための「座席確保」の役割を果たします。英語は頭でっかちな文を嫌うため、長い主語を後ろに回し、代わりにitを主語の位置に置くのです。
ネイティブの感覚
ネイティブにとって、「That he passed the exam is surprising.」のような文は非常に不自然に感じます。まず結論(It is surprising)を述べてから、詳細(that he passed the exam)を後で説明する方が自然で理解しやすいのです。
形式主語の基本パターン
  • It is + 形容詞 + that節
  • It is + 形容詞 + to不定詞
  • It seems/appears + that節
  • It happens + that節
形式主語の例文
It is important that we should protect the environment.
私たちが環境を保護することが重要です。
It is difficult to learn a foreign language.
外国語を学ぶことは困難です。
It seems that he is busy these days.
彼は最近忙しいようです。
It happened that I met him at the station.
偶然駅で彼に会いました。

2形式目的語のit

形式目的語itの本質
形式目的語のitは、真の目的語(that節や不定詞)が長い場合に、それを文末に置くための「場所取り」です。動詞の直後に長い節があると文が読みにくくなるため、itで目的語の位置を確保し、真の目的語を後ろに移動させます。
間違えやすいポイント
形式目的語のitは特定の動詞でのみ使用されます。すべての動詞で使えるわけではありません。

× I know it that he is honest.
○ I know that he is honest.
○ I find it strange that he is absent.
形式目的語を取る主な動詞
動詞 パターン 意味
find find it + 形容詞 + that節 ~だとわかる
think think it + 形容詞 + that節 ~だと思う
make make it + 形容詞 + that節 ~にする
consider consider it + 形容詞 + that節 ~だと考える
形式目的語の例文
I find it difficult to understand his behavior.
彼の行動を理解するのは困難だと思います。
We think it important that children should read books.
子供たちが本を読むことが重要だと思います。
The rain made it impossible for us to have a picnic.
雨のため、私たちはピクニックができませんでした。

3強調構文のit

強調構文itの本質
強調構文は、文の特定の部分にスポットライトを当てるための構文です。「It is/was ... that/who ~」の形で、「...なのは~だ」という意味を表現し、話し手が最も重要だと考える情報を前面に出します。
ネイティブの感覚
強調構文は、まるで舞台のスポットライトのような役割です。「It was John who broke the window.」では、窓を割った「犯人」がJohnであることを際立たせています。単に「John broke the window.」と言うより、Johnに焦点が当たるのです。
強調構文の見分け方
強調構文の判別法:
「It is/was」と「that/who」を取り除いても、文として成立すれば強調構文です。
  • It was yesterday that I met him. → I met him yesterday. ✓
  • It is clear that he is wrong. → Clear he is wrong. ✗(形式主語)
強調構文の例文
It was Tom who helped me yesterday.
昨日私を助けてくれたのはトムでした。
It is English that I want to study.
私が勉強したいのは英語です。
It was not until midnight that he came home.
彼が帰宅したのは真夜中になってからでした。
入試のコツ
強調構文では、強調される部分によってthat/whoを使い分けます:
  • 人を強調 → who/that
  • 人以外を強調 → that
  • 時を表す副詞句 → that(whenは不可)
  • 場所を表す副詞句 → that(whereは不可)

4時・天候・距離・状況のit

非人称のitの本質
時間・天候・距離・状況を表すitは、具体的な「それ」を指さない非人称のitです。これらは日本語にはない概念で、英語が「主語を必ず置く」という特徴を持つために生まれた用法です。
ネイティブの感覚
ネイティブにとって、これらのitは「漠然とした状況全体」を表しています。「It's raining.」のitは雨そのものではなく、「今この場の状況・環境」を指しています。日本語の「雨が降っている」とは発想が根本的に違うのです。
非人称itの主な用法
用法 日本語訳
時間 It is three o'clock. 3時です。
天候 It is raining. 雨が降っています。
距離 It is 5 miles to the station. 駅まで5マイルです。
状況 How is it going? 調子はどうですか。
非人称itの例文
It was getting dark when we arrived.
私たちが到着したとき、暗くなってきていました。
It snowed heavily last night.
昨夜は大雪でした。
It is about 10 minutes' walk from here.
ここから歩いて約10分です。

つながりマップ

  • 人称代名詞 - 基本的な代名詞の用法
  • 不定詞 - 形式主語・形式目的語の真の主語/目的語
  • that節 - 形式主語・形式目的語の真の主語/目的語
  • 倒置 - 強調のための語順変化
まとめ
  • 形式主語のit - 長い主語を後ろに回すための「座席確保」
  • 形式目的語のit - 特定の動詞で長い目的語を後置するための仕組み
  • 強調構文のit - 特定の部分にスポットライトを当てる表現
  • 非人称のit - 時間・天候・距離・状況を表す英語特有の用法

確認テスト

問1 次の文のitの用法を答えなさい。
"It is necessary that we should hurry."
▶ クリックして解答を表示 形式主語のit(真の主語:that we should hurry)
問2 次の文のitの用法を答えなさい。
"I found it strange that he didn't come."
▶ クリックして解答を表示 形式目的語のit(真の目的語:that he didn't come)
問3 次の文のitの用法を答えなさい。
"It was yesterday that I saw him."
▶ クリックして解答を表示 強調構文のit(yesterdayを強調)
問4 次の文のitの用法を答えなさい。
"It was snowing when I got up."
▶ クリックして解答を表示 非人称のit(天候を表す)

入試問題演習

A. 基礎
次の文の空所に入る最も適切なものを選びなさい。

I think ( ) important that children should play outside.
① this
② that
③ it
④ what
▶ クリックして解答・解説を表示
正解:③ it
thinkの形式目的語のitです。「I think it + 形容詞 + that節」の形で、真の目的語であるthat節を後ろに置くためにitが必要です。
B. 発展
次の文の空所に入る最も適切なものを選びなさい。

It was not until last year ( ) I visited Kyoto.
① when
② that
③ which
④ where
▶ クリックして解答・解説を表示
正解:② that
「It was not until 時 that ~」は「時になってようやく~した」という強調構文です。時を表す表現を強調する場合でも、関係副詞whenではなくthatを使います。
C. 応用
次の英文の意味として最も適切なものを選びなさい。

It occurred to me that I had left my wallet at home.
① 財布を家に忘れたことを思い出した
② 財布を家に忘れたことに気づいた
③ 財布を家に忘れたことを後悔した
④ 財布を家に忘れたことを心配した
▶ クリックして解答・解説を表示
正解:② 財布を家に忘れたことに気づいた
「It occurs to 人 that ~」は「人に~ということが思い浮かぶ、気づく」という意味の形式主語構文です。occurは「起こる、生じる」という意味で、突然思い浮かぶというニュアンスがあります。