第4章 受動態

受動態の基本
─ 「される側」に目線を移す英語のしくみ

「トムがその手紙を書いた」と「その手紙はトムによって書かれた」── 同じ事実でも、主語が変わると目線が変わります。
英語の受動態は、特別な構文ではなくただの be 動詞の文。その感覚を掴めば、受動態は一気にシンプルになります。
この記事では、受動態の基本の形と、能動態との書き換えをマスターしましょう。

1受動態とは? ─ 「目線の転換」という発想

日本語で「トムがこの本を書いた」と言えば、主語は「トム」。行為をする側の目線で語っています。 一方、「この本はトムによって書かれた」と言えば、主語は「この本」。行為を受ける側に目線が移っています。

英語でもまったく同じことが起こります。行為をする側を主語にした文が能動態行為を受ける側を主語にした文が受動態です。

💡 ここが本質:受動態 = 「される側」を主語にして目線を変える

受動態は「特別な文法」ではありません。英語には「だれを主語にするか」で視点を切り替えるしくみがあり、受動態はその1つです。

能動態:「する人」を主語にする → Tom wrote this book.

受動態:「される人/もの」を主語にする → This book was written by Tom.

どちらも同じ事実を述べていますが、主語が違う = 目線が違うのです。

🧠 ネイティブの感覚:英語は「主語が誰か」で視点が決まる

英語は日本語と違い、主語を省略できない言語です。だからこそ、「何を主語に選ぶか」が文の視点を決定づけます

能動態は「する人」の目線 ── 「トムが書いたんだよ」と、行為者にスポットライトが当たっています。

受動態は「される人/もの」の目線 ── 「この本は書かれたんだよ」と、行為の結果や対象にスポットライトが当たっています。

ネイティブは「どちらに注目してほしいか」で能動態と受動態を自然に使い分けています。

2受動態の基本の形:be + 過去分詞

受動態の形はとてもシンプルです。be 動詞 + 過去分詞 ── たったこれだけ。 実は受動態は、"We are happy." と同じ構造のただの be 動詞の文なのです。

📏 文法ルール:受動態の基本形

S + be動詞 + 過去分詞 (+ by 動作主)

「Sは(動作主によって)〜される / 〜された」

※ be 動詞は主語と時制に応じて変化する(am / is / are / was / were)。
※ by 〜(動作主)は必要なときだけつける(省略されることも多い)。
📝 例文で確認
The letter was written by Tom.
その手紙はトムによって書かれた。
English is spoken all over the world.
英語は世界中で話されている。
These cars are made in Japan.
これらの車は日本で作られている。

"We are happy." の happy のかわりに過去分詞を使って、be 動詞でつないでいるにすぎません。 主語が「どういう状態か」を過去分詞で説明している ── それが受動態の正体です。

🔬 ワンポイント:受動態 = 「be動詞の文」と考えるメリット

受動態を「be 動詞の文」と捉えると、疑問文や否定文の作り方もすぐにわかります。

疑問文 → be 動詞を前に出すだけ(Was the letter written by Tom?)

否定文 → be 動詞のうしろに not を置くだけ(The letter was not written by Tom.)

特別な操作は何もいりません。ふだんの be 動詞の文とまったく同じです。

時制ごとの受動態の形

時制 能動態 受動態
現在 Tom writes the letter. The letter is written by Tom.
過去 Tom wrote the letter. The letter was written by Tom.
未来 Tom will write the letter. The letter will be written by Tom.

どの時制でも原理は同じ ── be 動詞を時制に合わせて変化させるだけです。 未来形では助動詞 will のうしろに原形 be を置きます。

3能動態から受動態への書き換え

受動態を作る手順を、能動態との対応で整理しましょう。 初心者のうちは「能動態の目的語を主語にする」と考えると、正確に作ることができます。

📏 書き換えの3ステップ

ステップ1:能動態の目的語を、受動態の主語にする

ステップ2:動詞を「be 動詞 + 過去分詞」にする(be 動詞は新しい主語と時制に合わせる)

ステップ3:もとの主語を by 〜 にして文末に置く(不要なら省略)

📝 例文で確認:書き換えの手順
【能動態】Many people speak English.
多くの人が英語を話す。
【受動態】English is spoken by many people.
英語は多くの人によって話されている。

ただし、ネイティブは能動態をいちいち思い浮かべてから受動態を作っているわけではありません。 受動態を「be 動詞 + 過去分詞」で直接組み立てる感覚に慣れていきましょう。

⚠️ 落とし穴:自動詞は受動態にできない

受動態にできるのは目的語をとる動詞(他動詞)だけです。目的語のない自動詞は受動態にできません。

✕ 誤:The accident was happened yesterday.(happen は自動詞)

○ 正:The accident happened yesterday.

同様に、arrive, exist, occur, appear なども自動詞なので受動態にはできません。

4by 〜 を省略するとき

受動態の文には by 〜 がつくイメージがありますが、実際にはby 〜 がない受動態のほうがはるかに多いのです。 次の3つの場合、by 〜 はふつう省略されます。

🔬 by 〜 を省略する3つのケース

1. 動作主が不明なとき:My bike was stolen last night.(誰に盗まれたかわからない)

2. 動作主が一般の人々のとき:English is spoken in many countries.(by people は言うまでもない)

3. 動作主より行為・結果が重要なとき:The bridge was built in 1990.(誰が建てたかより、いつ建てられたかが重要)

受動態が使われる一番の理由は「する人」より「される人/もの」に注目したいから。だから by 〜 は不要になることが多いのです。

📝 例文で確認:by 〜 なしの受動態
The window was broken during the storm.
嵐の間に窓が割れた。(誰が割ったかは問題ではない)
Rice is grown in many parts of Asia.
米はアジアの多くの地域で栽培されている。(by people は不要)
This temple was built about 500 years ago.
この寺は約500年前に建てられた。(建てた人より時期が大切)

5つながりマップ

受動態の基本を学んだら、次のトピックへ進みましょう。

  • → G-4-2 受動態の疑問文・否定文:受動態の疑問文・否定文の作り方を学ぶ。「be 動詞の文」の感覚がそのまま活きます。
  • → G-4-3 注意すべき受動態:SVOO・SVOCの受動態、群動詞の受動態、by以外の前置詞。受動態の応用パターンです。
  • → G-4-4 受動態のバリエーション:完了形・進行形・助動詞との組み合わせ。基本の「be + 過去分詞」に重ねるだけです。
  • → G-1 文型:受動態を正確に作るには、もとの文型(SVO, SVOO, SVOC)を理解しておくことが大切です。

📋まとめ

  • 受動態 = 「される側」を主語にして目線を変えるしくみ
  • 受動態の形は S + be動詞 + 過去分詞 (+ by 動作主) ── ただの be 動詞の文
  • 能動態からの書き換え:目的語を主語にする → 動詞を be + 過去分詞にする → もとの主語を by 〜 にする
  • by 〜 は動作主が不明・一般的・不要なときに省略される(省略のほうが多い)

確認テスト

Q1. 受動態の基本の形を答えてください。

▶ クリックして解答を表示S + be動詞 + 過去分詞 (+ by 動作主)。be 動詞は主語と時制に合わせて変化させる。

Q2. 次の能動態を受動態に書き換えてください。
Tom wrote this letter.

▶ クリックして解答を表示This letter was written by Tom. 目的語 this letter を主語にし、wrote を was written に変え、もとの主語を by Tom にする。

Q3. "The accident was happened yesterday." はなぜ間違いですか。

▶ クリックして解答を表示happen は目的語をとらない自動詞なので、受動態にすることができない。正しくは "The accident happened yesterday."

Q4. by 〜 が省略される3つのケースを挙げてください。

▶ クリックして解答を表示①動作主が不明なとき、②動作主が一般の人々のとき、③動作主より行為・結果が重要なとき。受動態では by 〜 がないほうがむしろ普通。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

4-1-1 A 基礎 受動態の基本形 空所補充

This building (  ) about 50 years ago.

  • ① builds
  • ② was built
  • ③ has been built
  • ④ is building
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② was built

解説

判断のポイント:主語 this building と動詞 build の関係は「建物が建てられる」という受動の関係。

受動態の「be動詞 + 過去分詞」が必要です。50 years ago(50年前)という過去の時点を表す語があるので、過去形の was built が正解。

③ has been built は現在完了の受動態ですが、ago という明確な過去の時点がある場合、現在完了は使えません。

B 標準レベル

4-1-2 B 標準 能動態・受動態の判別 空所補充

A serious accident (  ) on this road last night.

  • ① was happened
  • ② happened
  • ③ has happened
  • ④ was occurring
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② happened

解説

判断のポイント:happen は「起こる」という意味の自動詞で、目的語をとりません。自動詞は受動態にできないため、① was happened は誤りです。

last night という過去の時点を表す語があるので、過去形 ② happened が正解。③ has happened は現在完了で、last night と共起できません。

得点の差がつくポイント
  • 「事故が起こされた」と考えて ① was happened を選んでしまうミスが非常に多い
  • happen / occur / arise / appear などの自動詞は受動態にできないことを覚えておく

C 発展レベル

4-1-3 C 発展 受動態と時制 空所補充

The next Olympic Games (  ) in Los Angeles in 2028.

  • ① are going to hold
  • ② will be held
  • ③ are held
  • ④ have been held
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② will be held

解説

判断のポイント:主語 The next Olympic Games と動詞 hold(開催する)の関係は「オリンピックが開催される」という受動の関係。受動態が必要です。

in 2028 は未来の時点を示しているため、未来の受動態 will be held が正解。① are going to hold は能動態で、「オリンピックが開催する」となり意味が通りません。

未来の受動態は「will + be + 過去分詞」。will のうしろに原形 be が来ることに注意しましょう。

得点の差がつくポイント
  • ① を選ぶ受験生は、主語と動詞の「する/される」の関係を確認していない
  • 受動態の問題では、まず「主語は動作をする側か、される側か」を判断することが鍵