第3章 助動詞

can / could の用法
─ 「潜在的な可能性」を表す万能選手

canの意味は「できる」だけではありません。「ありうる」「していい」── canは「潜在的な可能性」を表す万能選手です。
能力・許可・可能性、そしてcannotの推量まで、すべてを1本の糸でつなぐ核心イメージを掴みましょう。

1canの核心イメージ

canと聞くと、多くの学習者が真っ先に「〜できる」という意味を思い浮かべます。 しかし canには「〜してよい(許可)」「〜でありうる(可能性)」といった意味もあります。 これらがバラバラの暗記事項に見えるのは、canの核心イメージを掴んでいないからです。

💡 ここが本質:can = 「潜在的な力・可能性がある」

canの核心は「〜する力がある」「〜する可能性がある」「〜する道が開いている」という1つのイメージです。

能力:She can speak French. → 「フランス語を話す力がある」

可能性:Accidents can happen. → 「事故が起きる可能性がある」

許可:Can I use your phone? → 「電話を使う道が開いている(= 使っていい)」

すべて「そうなる潜在的な力・道がある」で繋がっています。

🧠 ネイティブの感覚:能力も許可も「可能性」も同じ感覚

ネイティブにとって canは「能力の can」「許可の can」「可能性の can」と別々に意識されているわけではありません。

どの用法でも根底にあるのは「その方向に道が開いている・そうなりうる」という感覚です。

日本語では「できる」「していい」「ありうる」と訳し分けますが、英語ではすべて同じ canの守備範囲です。この「1つの感覚で多くの意味をカバーする」のが助動詞の特徴です。

2canの主要用法(能力・可能・許可)

canの3つの主要用法を整理しましょう。核心イメージ「潜在的な可能性がある」から、それぞれの意味がどう派生しているかに注目してください。

📏 文法ルール:canの3大用法

1. 能力「〜できる」:主語に「〜する力がある」

2. 可能「〜しうる / ありうる」:状況的に「〜が起こる可能性がある」

3. 許可「〜してよい」:「〜する道が開いている」(カジュアルな許可)

※ 否定形は cannot(1語)または can't。can not と2語に分けるのは強調の場合のみ。
※ 許可のフォーマルな表現には may を使うこともある(→ G-3-3)。
📝 例文で確認
She can speak French fluently.
彼女はフランス語を流暢に話せる。(能力)
Accidents can happen to anyone.
事故は誰にでも起こりうる。(可能性)
Can I use your phone?
電話を借りてもいいですか。(許可)
You can see the ocean from this window.
この窓から海が見える。(知覚の可能 = 状況的にできる)

canの用法一覧

用法 意味 例文
能力 〜できる He can swim very fast.
可能(理論的) 〜しうる / ありうる It can be cold in April.
許可 〜してよい You can go home now.
知覚の可能 〜が見える / 聞こえる I can hear music.

3couldの用法

couldはcanの過去形ですが、単なる「過去のcan」にとどまりません。 英語の過去形がもつ「距離感」(→ G-10-1 仮定法の基本)が加わることで、 丁寧さや控え目な推量など、幅広い意味を生み出します。

📏 文法ルール:couldの3大用法

1. canの過去「〜できた」:過去の一般的能力

2. 丁寧な依頼「〜していただけますか」:can you ...? より丁寧

3. 控え目な推量「〜かもしれない」:canより弱い可能性

※ couldの「距離感」は3方向に分かれる:時間的距離(過去)心理的距離(丁寧)現実との距離(仮定法的)
🧠 ネイティブの感覚:could = canに距離感を加えた形

couldの正体は、canに「距離」を加えた形です。この距離は3種類あります。

過去への距離:I could swim when I was five.(5歳のとき泳げた)

相手への距離(丁寧さ):Could you help me?(手伝っていただけますか)

現実との距離(仮定法):It could be true.(本当かもしれない ── 確信は薄い)

どれも「canの意味をワンクッション遠くに置いている」感覚です。

📝 例文で確認
I could run fast when I was young.
若い頃は速く走れた。(過去の一般的能力)
Could you pass me the salt?
塩を取っていただけますか。(丁寧な依頼)
It could be true.
それは本当かもしれない。(控え目な推量)
You could at least say sorry.
せめて謝ることくらいできるだろう。(非難・仮定法的ニュアンス)
⚠️ 落とし穴:過去の能力 ── could vs was able to

「〜できた」を英語にするとき、couldとwas able toは同じではありません。

could一般的な能力(「以前は〜する力があった」)

was able to特定の1回の行為で実際にできた(「あのとき実際に〜した」)

✕ 不自然:The fire spread quickly, but everyone could escape.

○ 自然:The fire spread quickly, but everyone was able to escape.

「火事のとき全員が(実際に)逃げられた」のように、特定の1回の出来事には was able to を使います。couldは「逃げる力があった」という一般的能力に聞こえてしまいます。

ただし、否定文では could not = was not able to で同じ意味になります。「できなかった」はどちらでもOKです。

4cannotの推量 ─ 「〜のはずがない」

canの否定形 cannotには、能力の否定「〜できない」のほかに、推量の否定「〜のはずがない」という重要な用法があります。 「可能性がゼロだ」→「〜であるはずがない」という意味です。

📏 文法ルール:cannotの推量

cannot + 動詞の原形:「〜のはずがない」(現在の推量の否定)

cannot have + 過去分詞:「〜だったはずがない」(過去の推量の否定)

※ 口語では can't を使うことが多い。
※ must(〜に違いない)の反対が cannot(〜のはずがない)。may not は「〜ではないかもしれない」で、確信の強さが異なる。
📝 例文で確認
That can't be true.
それは本当のはずがない。(現在の推量の否定)
He cannot have said such a thing.
彼がそんなことを言ったはずがない。(過去の推量の否定)
She can't have forgotten about the meeting.
彼女が会議のことを忘れたはずがない。(過去の推量の否定)
🔬 ワンポイント:推量の助動詞 ── 確信度の比較

推量を表す助動詞は、確信の強さで並べると次のようになります。

must(〜に違いない)── 確信度が高い

may / might(〜かもしれない)── 中程度

could(〜でありうる)── 弱い可能性

そして否定方向では:

may not(〜ではないかもしれない)── 中程度の否定

cannot(〜のはずがない)── 強い否定 ← mustの反対極

must(〜に違いない)と cannot(〜のはずがない)は推量の対極にあたります。この対比は入試でも頻出です。

推量の助動詞:確信度マップ

確信度 肯定 否定
高い must do(〜に違いない) cannot do(〜のはずがない)
may do(〜かもしれない) may not do(〜ではないかもしれない)
低い might / could do(〜でありうる) might not do(〜ではないかもしれない)

5つながりマップ

can / could を学んだら、次の関連トピックを確認しましょう。

  • → G-3-2 must の用法:推量の must(〜に違いない)は cannot(〜のはずがない)と対極の関係。セットで押さえるのが鉄則です。
  • → G-3-3 may の用法:推量の may(〜かもしれない)は確信度が中間。許可の may は can より格式的。
  • → G-3-10 助動詞 + have done:cannot have done(〜だったはずがない)/ must have done(〜だったに違いない)など、過去への推量をまとめて学ぶ。
  • → G-3-4 will / would の用法:couldの「距離感」は would と同じ原理。助動詞の過去形がもつ「控え目さ」を横断的に理解できます。

📋まとめ

  • canの核心 = 「潜在的な力・可能性がある」── 能力・可能・許可すべてこのイメージから派生
  • 能力「〜できる」/ 可能「〜しうる」/ 許可「〜してよい」の3大用法
  • could = canに「距離感」を加えた形 → 過去の能力 / 丁寧な依頼 / 控え目な推量
  • 過去の能力:could(一般的能力)と was able to(特定の1回で実際にできた)を区別する
  • cannot + 原形(〜のはずがない)/ cannot have done(〜だったはずがない)は推量の否定
  • must(〜に違いない)と cannot(〜のはずがない)は推量の対極

確認テスト

Q1. canの核心イメージを一言で説明してください。

▶ クリックして解答を表示「潜在的な力・可能性がある」。能力(〜する力がある)、可能(〜が起こりうる)、許可(〜する道が開いている)のすべてがこのイメージから派生する。

Q2. 次の2文の違いを説明してください。
a) He could swim when he was a child.
b) He was able to swim to the shore.

▶ クリックして解答を表示a) couldは過去の「一般的な能力」を表す。「子供の頃は泳げた(泳ぐ力があった)」。b) was able toは「特定の1回の行為で実際にできた」ことを表す。「岸まで泳ぐことができた(実際に泳ぎ切った)」。肯定文で特定の1回の行為にはwas able toを使う。

Q3. cannot と may not の推量における違いを説明してください。

▶ クリックして解答を表示cannot =「〜のはずがない」(強い否定の推量。mustの反対極)。may not =「〜ではないかもしれない」(中程度の否定の推量)。cannotのほうが否定の確信度がはるかに高い。

Q4. Could you ...? が Can you ...? より丁寧に聞こえる理由を「距離感」の観点から説明してください。

▶ クリックして解答を表示couldはcanの過去形であり、過去形には「距離感」がある。相手との心理的距離をとることで直接的な表現を避け、丁寧さを生んでいる。仮定法と同じ「過去形 = 距離」の原理。

8入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

3-5-1 A 基礎 canの用法 空所補充

Earthquakes (  ) happen at any time without warning.

  • ① must
  • ② can
  • ③ should
  • ④ will
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② can

解説

判断のポイント:「地震はいつでも前触れなく起こりうる」という「理論的な可能性」を述べている文です。

canには「〜しうる(理論的可能性)」の用法があり、「一般論として起こる可能性がある」ことを表します。② can が正解です。

① must(〜に違いない / 〜しなければならない)、③ should(〜すべき / 〜のはず)、④ will(〜だろう)はいずれも文意に合いません。

B 発展レベル

3-5-2 B 発展 could vs was able to 空所補充

The exam was very difficult, but I (  ) pass it.

  • ① could
  • ② was able to
  • ③ can
  • ④ should
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

② was able to

解説

判断のポイント:「とても難しかったが、合格できた」── 過去の特定の1回の出来事で「実際にできた」ことを述べています。

couldは「一般的能力(〜する力があった)」を表すため、特定の1回の成功には不自然です。② was able to が正解。

「試験に受かる一般的能力があった」のではなく「実際にその試験に受かった」なので、was able to を選びます。

得点の差がつくポイント
  • couldを選ぶ受験生が多い。「〜できた = could」と機械的に覚えると間違える。
  • 「一般的能力 → could」「特定の1回の成功 → was able to」の区別が鍵。
  • ただし否定文(couldn't / wasn't able to)ではどちらも使える。

C 応用レベル

3-5-3 C 応用 cannot have done 空所補充

Tom was with me all day yesterday. He (  ) the window at that time.

  • ① must break
  • ② must have broken
  • ③ can't have broken
  • ④ shouldn't break
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ can't have broken

解説

判断のポイント:前文「トムは昨日一日中私と一緒だった」から、「あの時トムが窓を壊したはずがない」という過去の推量の否定(〜だったはずがない)と判断できます。

cannot have + 過去分詞 =「〜だったはずがない」。③ can't have broken が正解です。

② must have broken(壊したに違いない)では文脈と矛盾します。① must break、④ shouldn't break は過去の推量を表す形ではありません。

得点の差がつくポイント
  • 前文の情報(一日中一緒だった)から「〜のはずがない」を導く読解力が問われる
  • 「助動詞 + have done」で過去への推量を表す形を正確に使い分けられるかが鍵
  • must have done(〜だったに違いない)と cannot have done(〜だったはずがない)は対極の関係