第10章 仮定法

ifの省略とif節に相当する表現
─ 倒置・副詞句・主語に隠れた仮定

「もし私があなたなら」を Were I you, ... と書ける──
仮定法では if を省略して倒置にすることがあります。
さらに、副詞句・主語・不定詞が if 節の代わりをする表現も多数。
入試で差がつく「隠れた仮定法」を見抜く力を身につけましょう。

1倒置によるifの省略

仮定法の if 節では、were / had / should が含まれている場合に限り、if を省略して主語と助動詞を入れ替える(倒置する)ことができます。フォーマルな文章や入試で頻出のパターンです。

📏 文法ルール:ifの省略と倒置

仮定法過去(be動詞のみ)
If S were ... → Were S ...

仮定法過去完了
If S had done ... → Had S done ...

If S were to do ...
Were S to do ...

If S should do ...
Should S do ...

※ 仮定法過去で一般動詞の場合は倒置による if の省略はできません。
例:If I knew his number → Knew I his number とは言えない。
📝 例文で確認
Were I in your place, I would decline the offer.
もし私があなたの立場なら、その申し出を断るだろう。(= If I were in your place)
Had you asked me, I would have helped you.
もし私に頼んでくれたら、助けてあげたのに。(= If you had asked me)
Were the sea to rise two meters, most of this island would be under water.
もし海が2メートル上昇すれば、この島の大半は海の中だ。(= If the sea were to rise)
Should you happen to meet them, please give them my best regards.
もし彼らにたまたま会うことがあれば、よろしくお伝えください。(= If you should happen to)

Had it not been for A の形

G-10-6 で学んだ if it had not been for A(もし〜がなかったら)も、倒置で Had it not been for A とすることができます。同様に、if it were not for A → Were it not for A です。

📝 倒置形の例
Had it not been for that great defensive play, we would have lost the game.
あの非常にうまい守りがなければ、そのゲームに負けていただろう。
Were it not for his support, I couldn't continue this project.
彼の支えがなければ、このプロジェクトを続けることができないだろう。
⚠️ 注意:倒置形が主節の後に来るパターン

倒置形の条件節は主節の前に置かれるのが一般的ですが、主節の後に置かれることもあります。読解で見落としやすいので注意しましょう。

A better bridge would have been built had they offered their help.

(= ... if they had offered their help. 彼らが援助を申し出ていたら、よりよい橋が建設されていただろう。)

You might have won that prize had you been a little more patient.

(= ... if you had been a little more patient. もう少し辛抱強かったら、その賞を取れたかもしれないのに。)

🧠 ネイティブの感覚:倒置はフォーマルで印象的

倒置は疑問文と同じ語順です。疑問文の語順は文に感情的な抑揚やインパクトを与える形です。仮定法の倒置も同様に、通常の if を使った文よりも「文に勢いがある」印象になり、フォーマルな言い換えとして好まれます。

日本語でも「もし彼に聞いていれば」と「聞いていればこそ」では後者の方が力強い印象を受けますね。英語の倒置も同じ効果を持っています。

2副詞句に含まれる仮定の意味

if 節を使わずに、副詞句(with A / without A / otherwise)が仮定の意味を担う表現があります。動詞の形(would do / would have done)と文意から仮定法の文だと判断し、仮定の意味がどこに含まれているかを見抜くことが大切です。

with A「もしAがあれば / あったら」

📏 文法ルール:with A に仮定の意味

With A, S + would / could / might + 動詞の原形 ...(仮定法過去)

With A, S + would / could / might + have + 過去分詞 ...(仮定法過去完了)

「もしAがあれば / あったら」── without A(もしAがなければ)と逆の意味です。

📝 例文で確認
With a little more support from the government, the African children would have survived.
政府からの援助がもう少しあったら、そのアフリカの子どもたちは生き延びていただろう。
With a little more effort, he would have passed the examination.
もう少し努力していれば、彼は試験に受かっていただろうに。

otherwise「さもなければ / そうでなかったら」

📏 文法ルール:otherwise に仮定の意味

S + V(直説法); otherwise S' + would / could / might + 動詞の原形 ...

S + V(直説法); otherwise S' + would / could / might + have + 過去分詞 ...

前述の事実を受けて、「もしそうでなければ / そうでなかったならば」と反対の仮定をする表現。セミコロン(;)、コンマ、ピリオドの後に置かれます。

📝 例文で確認
I wrote to my parents; otherwise they would have worried about me.
私は両親に手紙を書いた。そうしなければ、両親は私のことを心配しただろう。
We went by taxi; otherwise, we would have been late.
私たちはタクシーで行った。そうしなければ遅れていただろう。
💡 ここが本質:otherwise の仮定内容を読み取る

otherwise は前述の事実の「反対」を仮定しています。上の例で言えば:

・「手紙を書いた」→ otherwise =「もし書かなかったら」(= If I had not written to my parents)

・「タクシーで行った」→ otherwise =「もしタクシーで行かなかったら」(= If we had not gone by taxi)

otherwise の後の動詞の形(would have done)から仮定法過去完了と判断できます。

3主語・不定詞・分詞構文に含まれる仮定の意味

if 節だけでなく、主語そのものや不定詞句、分詞構文が仮定の条件を表す場合があります。主節に would / could / might が使われていることが仮定法を見抜く手がかりです。

主語に仮定の意味

主語に「もし〜があれば」「もし〜がいたら」という仮定の意味が含まれることがあります。

📝 例文で確認
Greater care would have prevented him from making such a mistake.
もっと注意をしていれば、彼はそんな間違いをしなくてすんだのに。
= If he had been more careful, he could have avoided such a mistake.
(if 節を使った書き換え)
A careful salesperson could have avoided the trouble.
注意深いセールスパーソンなら、そんなもめごとは避けることができただろう。
= If he [she] were a careful salesperson, he [she] could have avoided the trouble.
(if 節を使った書き換え)

不定詞に仮定の意味

不定詞句が「もし〜すれば」「もし〜したら」という仮定の条件を表す場合があります。

📝 例文で確認
To see us walking together, they would take you for my sister.
私たちが一緒に歩いているところを見れば、彼らはあなたを私の姉(妹)と間違うだろう。
= If they saw us walking together, they would take you for my sister.
(if 節を使った書き換え)

分詞構文に仮定の意味

分詞構文が条件節の意味を含むこともあります。

📝 例文で確認
The same thing, happening in a large hotel, would amount to disaster.
同じことが大きなホテルで起これば、大惨事になるだろう。
= If the same thing happened in a large hotel, it would amount to disaster.
(if 節を使った書き換え)
🔬 ワンポイント:「隠れた仮定法」の見抜き方

if 節がない仮定法を見抜くポイントは、主節の動詞の形です。would / could / might + 動詞の原形(仮定法過去)、would / could / might + have + 過去分詞(仮定法過去完了)が使われていたら、文のどこかに仮定の意味が隠れていないか探しましょう。

4条件を表す表現のない仮定法

仮定法でありながら、条件を表す表現が一切なく、話者の意識の中でのみ「もし〜すれば」「〜していたら」という気持ちが働いている場合があります。文脈から仮定法のニュアンスを読み取る必要がある、最も難しいパターンです。

📝 例文で確認
"I didn't go to class yesterday because my car broke down."
"You could have borrowed mine. I wasn't using it."
「車が故障したので、昨日授業に行きませんでした。」
「私の車を借りることができたのに。使ってなかったから。」

この例では could have borrowed が仮定法過去完了の主節の形ですが、if 節に相当する表現はどこにもありません。話者の頭の中に「もし私に頼んでいたら」という仮定が暗黙のうちに含まれているのです。

🧠 ネイティブの感覚:文脈が if 節の代わりをする

英語では、前後の会話や状況の文脈が明らかに仮定の条件を示している場合、if 節や条件を表す表現を省略して仮定法の主節だけを述べることがあります。「言わなくてもわかるよね」という感覚です。

could have done は「(あの時そうしていれば)〜できたのに」、would have done は「(そうしていたら)〜しただろうに」というニュアンスで、後悔や残念な気持ちを表します。

⚠️ 注意:could have done の2つの意味

could have done には次の2つの意味があります。文脈で判断しましょう。

① 仮定法:「〜できたのに(実際にはしなかった)」

You could have borrowed mine.(借りることができたのに → 実際には借りなかった)

② 推量:「〜した可能性がある」

I am disappointed with the result because we could have won the game.(勝てた可能性もあったので、結果に失望している)

5つながりマップ

  • → G-10-6 if it were not for / if it had not been for:倒置形 Were it not for A / Had it not been for A の元の形。but for A / without A の書き換えも復習しましょう。
  • → G-10-1 仮定法過去 / G-10-2 仮定法過去完了:「隠れた仮定法」を見抜く基本は、主節の動詞の形の判別力。仮定法過去と過去完了の基本を確認しましょう。
  • → G-10-3 仮定法の組み合わせと特殊形:If S were to do ... / If S should do ... の倒置形は、元の形をしっかり押さえたうえで学びましょう。

📋まとめ

  • if の省略と倒置:were / had / should がある場合に、if を省略して主語と入れ替える(倒置)。仮定法過去の一般動詞では不可。
  • 倒置の4パターン:Were S ... / Had S done ... / Were S to do ... / Should S do ...
  • 副詞句の仮定:with A(もしAがあれば)/ without A(もしAがなければ)/ otherwise(もしそうでなければ)
  • 主語・不定詞の仮定:主語に仮定の意味(Greater care would ...)、不定詞に仮定の意味(To see ..., they would ...)、分詞構文に仮定の意味
  • 条件表現のない仮定法:文脈から仮定のニュアンスを読み取る。could have done / would have done に注目。

確認テスト

Q1. If I were in your place を if を省略した倒置形に書き換えてください。

▶ クリックして解答を表示Were I in your place。if を省略し、were を主語の前に出す。仮定法過去の be 動詞 were の場合のみ倒置が可能。

Q2. We went by taxi; otherwise, we would have been late. の otherwise は何を仮定している?

▶ クリックして解答を表示「もしタクシーで行かなかったら」(= If we had not gone by taxi)を仮定している。前述の事実(タクシーで行った)の反対の仮定。otherwise の後が would have been(仮定法過去完了)なので、過去の事実に反する仮定。

Q3. To see us walking together, they would take you for my sister. の不定詞は何を意味する?

▶ クリックして解答を表示「もし私たちが一緒に歩いているところを見れば」という仮定の意味。= If they saw us walking together。不定詞が if 節の代わりをしている。

Q4. if の省略で倒置にできるのは、仮定法過去の場合どんな動詞のとき?

▶ クリックして解答を表示be 動詞の were のときのみ。一般動詞の仮定法過去では倒置による if の省略はできない。例:If I knew → Knew I とは言えない。

8入試問題演習

A 基礎レベル

10-7-1 A 基礎 ifの省略 空所補充

(  ) in her position, I would decline the offer.

  • ① If I had
  • ② If I have been
  • ③ If were I
  • ④ Were I
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

④ Were I

解説

判断のポイント:主節の動詞 would decline に注目。仮定法過去の文です。

「もし彼女の立場なら」= If I were in her position の if を省略した倒置形 → Were I in her position。④ Were I が正解。

③ If were I は if と倒置が両方あるので誤り。if を使うなら If I were、省略するなら Were I。

B 発展レベル

10-7-2 B 発展 otherwise 空所補充

We went by taxi; (  ), we would have been late.

  • ① otherwise
  • ② therefore
  • ③ in particular
  • ④ instead
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

① otherwise

解説

判断のポイント:セミコロン以降の動詞 would have been に注目。仮定法過去完了の形です。

前半「タクシーで行った」は事実。後半は仮定法過去完了なので、前述の事実に反する仮定が必要 → ① otherwise「もしそうでなかったならば」が正解。

「私たちはタクシーで行った。そうしなければ(= タクシーで行かなかったら)、遅れていただろう。」

C 応用レベル

10-7-3 C 応用 不定詞に仮定の意味 空所補充

(a) To see us walking together, they would take you for my sister.

(b) If (  ) us walking together, they would take you for my sister.

  • ① they will see
  • ② they have seen
  • ③ they saw
  • ④ they would see
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ they saw

解説

判断のポイント:(a)の不定詞 To see に仮定の意味が含まれています。主節の動詞が would take(仮定法過去)なので、if 節も仮定法過去の形にします。

仮定法過去の if 節 = If + S + 過去形 → ③ they saw が正解。

「私たちが一緒に歩いているところを見れば、彼らはあなたを私の姉(妹)と間違うだろう。」

得点の差がつくポイント
  • 不定詞が if 節の代わりをしていることを見抜く力
  • 主節の動詞の形から仮定法過去と判断し、if 節の時制を決める