第10章 仮定法

仮定法過去
─ 「もしSが...すれば、S'は〜するだろう」の基本形

「もし私が鳥だったら…」── なぜ英語では過去形を使うのでしょうか。
それは英語の過去形がもつ「距離感」に秘密があります。
仮定法過去の構造とネイティブの感覚を一緒に掴みましょう。

1仮定法とは何か ─ 直説法との違い

日本語で「もし雨が降ったら、試合は中止です」と言うとき、それは現実に起こりうることを想定した表現です。 一方、「もし私が鳥だったら、空を飛ぶのに」と言うとき、これは現実にはありえないことを空想しています。

日本語ではどちらも「もし〜たら」で表現できてしまいますが、英語ではこの2つを動詞の形そのもので明確に区別します。

日本語 英語
現実的な仮定
(起こりうる)
もし雨が降ったら… If it rains, ...(現在形)
非現実の仮定
(ありえない/可能性が低い)
もし私が鳥だったら… If I were a bird, ...(過去形)
💡 ここが本質:仮定法 = 「これは現実じゃない」のシグナル

英語には「直説法」と「仮定法」という2つのモードがあります。

直説法:事実や現実的なことを述べるモード(ふだんの英語)

仮定法:事実と異なること・可能性が低いことを述べるモード

仮定法は「特殊な文法」ではなく、現実と空想を動詞の形で区別する英語のしくみです。

2過去形 = 「距離」の感覚

「なぜ現在のことなのに過去形を使うのか」── 仮定法を学ぶとき、多くの人がここでつまずきます。 この疑問を解くカギは、英語の過去形がもつ「距離感」にあります。

🧠 ネイティブの感覚:過去形 = 「遠さ」を感じる形

英語のネイティブスピーカーにとって、過去形は単に「昔のこと」を表すだけの形ではありません。過去形には「今とは切り離されている」「距離がある」という感覚が宿っています。

この「距離」は3つの場面で現れます:

1. 時間的距離:I lived in Tokyo.(昔住んでいた = 今とは離れた過去)

2. 心理的距離(丁寧さ)Could you help me?(Can you...? より丁寧 = 相手との距離を保つ)

3. 現実との距離(仮定法):If I were rich...(実際には金持ちではない = 現実から離れている)

3つとも根っこは同じ「距離感」です。この感覚を掴めば、仮定法の「なぜ過去形?」は一発で解決します。

⚠️ 落とし穴:「過去形 = 過去のこと」という思い込み

仮定法を学ぶ日本人学習者にとって最大のハードルは、「過去形なのに過去の話ではない」という点です。

✕ 誤解:If I had money...「(以前は)お金を持っていたら…」

○ 正解:If I had money...「(今)お金を持っていたら…」(仮定法過去 → 現在の非現実)

仮定法の過去形は「時間」ではなく「距離」を表しています。「現在形から1つ過去にずらす = 現実から1つ離れる」と理解しましょう。

3仮定法過去の基本形

仮定法過去は、現在の事実に反する仮定や、これから実現する可能性が低い仮定を表す形です。 名前に「過去」とありますが、表しているのは現在のことです。

📏 文法ルール:仮定法過去の基本形

If + S + 動詞の過去形 ..., S' + would / could / might + 動詞の原形 ...

「もし(今)Sが〜なら、S'は…だろうに / …できるのに / …かもしれないのに」

※ if節 = 過去形で「現実からの距離」をとる。
※ 主節 = would / could / might(助動詞の過去形)+ 原形で「控え目な推量」。
※ be動詞は主語に関係なく were を使う(後述)。
📝 例文で確認
If I had enough money, I could buy that car.
十分なお金があれば、あの車が買えるのに。(実際にはお金がない)
If you practiced more, you would be a better player.
もっと練習すれば、もっと上手な選手になれるのに。(実際には練習していない)
If she lived closer, we might see each other more often.
彼女がもっと近くに住んでいたら、もっと頻繁に会えるかもしれないのに。

いずれの例文でも、if節は過去形で「現実との距離」をとり、主節はwould / could / might + 原形で「もしそうなら…だろうなあ」と控え目に結んでいます。

4be動詞は were を使う

仮定法過去では、be動詞の過去形を使いますが、ここで特別なルールがあります。 主語が I / he / she / it であっても、仮定法ではwere を使います。

🧠 ネイティブの感覚:were は「非現実マーカー」

昔の英語(古英語)には、仮定法専用の動詞変化がありました。現代英語ではほとんど消えてしまいましたが、were だけはその名残として今も生き残っています。

I was ではなく I were と言うことで、「これは現実の話じゃないよ」というシグナルをより明確に伝えることができるのです。

📝 例文で確認
If I were you, I wouldn't do such a thing.
もし私があなただったら、そんなことはしないだろう。
If I were a company owner, I would start a special online system.
もし私が社長なら、特別なオンラインシステムを立ち上げるだろう。
🔬 ワンポイント:口語では was も使われるが、試験では were

日常会話では "If I was rich..." のように was を使うネイティブも多くいます。しかし、入試・資格試験のフォーマルな場面では were が正解とされます。

まずは were の形に慣れておきましょう。

5would / could / might の使い分け

仮定法過去の主節で使う助動詞は would だけではありません。ニュアンスに応じて使い分けます。

助動詞 ニュアンス 例文
would 「〜するだろうなあ」── 最も一般的。推量の控え目表現。 I would travel the world.
could 「〜できるだろうなあ」── 能力・可能性に焦点。 I could buy that car.
might 「〜かもしれないなあ」── wouldよりさらに不確か。 We might see each other.

いずれも will / can / may の過去形であり、「距離をとって控え目にする」という原理は同じです。 また、主語が I / we のときには should を使うこともありますが、これは would と同じ意味です。

🔬 ワンポイント:主節に should が使われるケース

主節で should を使うのは、原則として主語が一人称(I / we)の場合のみです。意味は would と同じなので、迷ったら would を使えば大丈夫です。

6つながりマップ

仮定法過去の基本を学んだら、次のトピックへ進みましょう。

  • → G-10-2 仮定法過去完了:「もしあの時〜だったら」と過去の非現実を表す形。仮定法過去と同じ「距離」の原理で、さらに1段過去にずらします。
  • → G-10-3 仮定法の組み合わせと特殊形:過去と過去完了の混合形や、If S were to do / If S should do など、仮定法のバリエーションを学びます。
  • → G-3 助動詞:would / could / might の「控え目さ」は、助動詞の過去形がもつ「距離感」から来ています。同じ原理です。
  • → G-2 時制:仮定法を理解するには、「本来の時制」との差を意識することが大切。時制の基本を確認しておきましょう。

📋まとめ

  • 仮定法 = 「これは現実じゃない」と伝えるための動詞の使い方
  • 英語の過去形は「時間的距離」だけでなく「心理的距離」「現実との距離」も表す
  • 仮定法過去の基本形:If + S + 過去形, S' + would/could/might + 原形
  • 仮定法過去が表すのは現在の事実に反する仮定(名前に惑わされないこと!)
  • 仮定法の be動詞は主語に関係なく were を使う(古英語の名残)
  • 覚え方の核心:「距離をとって、控え目に結ぶ」── それが仮定法のリズム

確認テスト

Q1. 仮定法過去はどんな内容を表す形ですか。

▶ クリックして解答を表示現在の事実に反する仮定、または実現する可能性が低い仮定を表す形。名前に「過去」とあるが、表すのは現在のこと。

Q2. 次の空所に入る適切な語を選びなさい。
If my sister (  ) here, she would advise me.

▶ クリックして解答を表示were。仮定法過去のbe動詞は、主語に関係なくwereを使う。「もしここに姉がいれば、助言してくれるのに(実際にはいない)」

Q3. Could you...? が Can you...? より丁寧に聞こえる理由を、仮定法の考え方を使って説明してください。

▶ クリックして解答を表示canの過去形couldを使うことで、相手との心理的距離をとり、直接的な表現を避けている。過去形のもつ「距離感」が丁寧さを生む原理は、仮定法が「現実からの距離」を表す原理と同じ。

Q4. 仮定法過去の主節で使える助動詞を3つ挙げ、それぞれのニュアンスを答えなさい。

▶ クリックして解答を表示would「〜するだろうなあ」(最も一般的な推量)、could「〜できるだろうなあ」(能力・可能性)、might「〜かもしれないなあ」(wouldよりさらに不確か)。いずれもwill/can/mayの過去形。

9入試問題演習

この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。

A 基礎レベル

10-1-1 A 基礎 仮定法過去 空所補充

This computer would be perfect if it (  ) a little lighter.

  • ① is
  • ② has been
  • ③ were
  • ④ will be
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ were

解説

判断のポイント:主節に would be があるので、仮定法過去と判断できます。

仮定法過去のif節では動詞を過去形にします。be動詞の場合は主語に関係なく were を使うので、③ were が正解です。

「このコンピュータは、もう少し軽ければ完璧なのに(実際にはもう少し重い)」

B 発展レベル

10-1-2 B 発展 仮定法過去 空所補充

John (  ) the team if he had time, but he is really busy now.

  • ① joins
  • ② joined
  • ③ would join
  • ④ have joined
▶ クリックして解答・解説を表示
解答

③ would join

解説

判断のポイント:if節の動詞 had が過去形であり、but以下の文が現在形(is really busy now)なので、現在の事実に反する仮定を表す仮定法過去だと判断できます。

仮定法過去の主節は「助動詞の過去形 + 原形」を用いるので、③ would join が正解です。

「ジョンは、時間があればそのチームに入るだろう。でも彼は今本当に忙しい。」

C 応用レベル

10-1-3 C 応用 仮定法過去 整序英作文

次の日本語に合うように、( ) 内の語句を並べ替えなさい。

「その知らせを聞いたらメアリーはどうするだろうか。」

( would / do / if / heard / Mary / what / she ) the news?

▶ クリックして解答・解説を表示
解答

What would Mary do if she heard the news?

解説

判断のポイント:「〜したらどうするだろうか」は仮定法過去の疑問文です。

仮定法過去の疑問文では、主節が What would + S + do ...? の語順になります。if節の動詞は過去形 heard を使います。

仮定法過去の疑問文を作る力は、英作文でも非常に重要です。

得点の差がつくポイント
  • 仮定法過去の疑問文で would の位置を正しく置けるか
  • if節で heard(過去形)を使えるか