「もし私が鳥だったら…」── なぜ英語では過去形を使うのでしょうか。
それは英語の過去形がもつ「距離感」に秘密があります。
仮定法過去の構造とネイティブの感覚を一緒に掴みましょう。
日本語で「もし雨が降ったら、試合は中止です」と言うとき、それは現実に起こりうることを想定した表現です。 一方、「もし私が鳥だったら、空を飛ぶのに」と言うとき、これは現実にはありえないことを空想しています。
日本語ではどちらも「もし〜たら」で表現できてしまいますが、英語ではこの2つを動詞の形そのもので明確に区別します。
| 日本語 | 英語 | |
|---|---|---|
| 現実的な仮定 (起こりうる) |
もし雨が降ったら… | If it rains, ...(現在形) |
| 非現実の仮定 (ありえない/可能性が低い) |
もし私が鳥だったら… | If I were a bird, ...(過去形) |
英語には「直説法」と「仮定法」という2つのモードがあります。
直説法:事実や現実的なことを述べるモード(ふだんの英語)
仮定法:事実と異なること・可能性が低いことを述べるモード
仮定法は「特殊な文法」ではなく、現実と空想を動詞の形で区別する英語のしくみです。
「なぜ現在のことなのに過去形を使うのか」── 仮定法を学ぶとき、多くの人がここでつまずきます。 この疑問を解くカギは、英語の過去形がもつ「距離感」にあります。
英語のネイティブスピーカーにとって、過去形は単に「昔のこと」を表すだけの形ではありません。過去形には「今とは切り離されている」「距離がある」という感覚が宿っています。
この「距離」は3つの場面で現れます:
1. 時間的距離:I lived in Tokyo.(昔住んでいた = 今とは離れた過去)
2. 心理的距離(丁寧さ):Could you help me?(Can you...? より丁寧 = 相手との距離を保つ)
3. 現実との距離(仮定法):If I were rich...(実際には金持ちではない = 現実から離れている)
3つとも根っこは同じ「距離感」です。この感覚を掴めば、仮定法の「なぜ過去形?」は一発で解決します。
仮定法を学ぶ日本人学習者にとって最大のハードルは、「過去形なのに過去の話ではない」という点です。
✕ 誤解:If I had money...「(以前は)お金を持っていたら…」
○ 正解:If I had money...「(今)お金を持っていたら…」(仮定法過去 → 現在の非現実)
仮定法の過去形は「時間」ではなく「距離」を表しています。「現在形から1つ過去にずらす = 現実から1つ離れる」と理解しましょう。
仮定法過去は、現在の事実に反する仮定や、これから実現する可能性が低い仮定を表す形です。 名前に「過去」とありますが、表しているのは現在のことです。
If + S + 動詞の過去形 ..., S' + would / could / might + 動詞の原形 ...
「もし(今)Sが〜なら、S'は…だろうに / …できるのに / …かもしれないのに」
いずれの例文でも、if節は過去形で「現実との距離」をとり、主節はwould / could / might + 原形で「もしそうなら…だろうなあ」と控え目に結んでいます。
仮定法過去では、be動詞の過去形を使いますが、ここで特別なルールがあります。 主語が I / he / she / it であっても、仮定法ではwere を使います。
昔の英語(古英語)には、仮定法専用の動詞変化がありました。現代英語ではほとんど消えてしまいましたが、were だけはその名残として今も生き残っています。
I was ではなく I were と言うことで、「これは現実の話じゃないよ」というシグナルをより明確に伝えることができるのです。
日常会話では "If I was rich..." のように was を使うネイティブも多くいます。しかし、入試・資格試験のフォーマルな場面では were が正解とされます。
まずは were の形に慣れておきましょう。
仮定法過去の主節で使う助動詞は would だけではありません。ニュアンスに応じて使い分けます。
| 助動詞 | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| would | 「〜するだろうなあ」── 最も一般的。推量の控え目表現。 | I would travel the world. |
| could | 「〜できるだろうなあ」── 能力・可能性に焦点。 | I could buy that car. |
| might | 「〜かもしれないなあ」── wouldよりさらに不確か。 | We might see each other. |
いずれも will / can / may の過去形であり、「距離をとって控え目にする」という原理は同じです。 また、主語が I / we のときには should を使うこともありますが、これは would と同じ意味です。
主節で should を使うのは、原則として主語が一人称(I / we)の場合のみです。意味は would と同じなので、迷ったら would を使えば大丈夫です。
仮定法過去の基本を学んだら、次のトピックへ進みましょう。
Q1. 仮定法過去はどんな内容を表す形ですか。
Q2. 次の空所に入る適切な語を選びなさい。
If my sister ( ) here, she would advise me.
Q3. Could you...? が Can you...? より丁寧に聞こえる理由を、仮定法の考え方を使って説明してください。
Q4. 仮定法過去の主節で使える助動詞を3つ挙げ、それぞれのニュアンスを答えなさい。
この記事で学んだ内容を、入試形式の問題で確認しましょう。
This computer would be perfect if it ( ) a little lighter.
③ were
判断のポイント:主節に would be があるので、仮定法過去と判断できます。
仮定法過去のif節では動詞を過去形にします。be動詞の場合は主語に関係なく were を使うので、③ were が正解です。
「このコンピュータは、もう少し軽ければ完璧なのに(実際にはもう少し重い)」
John ( ) the team if he had time, but he is really busy now.
③ would join
判断のポイント:if節の動詞 had が過去形であり、but以下の文が現在形(is really busy now)なので、現在の事実に反する仮定を表す仮定法過去だと判断できます。
仮定法過去の主節は「助動詞の過去形 + 原形」を用いるので、③ would join が正解です。
「ジョンは、時間があればそのチームに入るだろう。でも彼は今本当に忙しい。」
次の日本語に合うように、( ) 内の語句を並べ替えなさい。
「その知らせを聞いたらメアリーはどうするだろうか。」
( would / do / if / heard / Mary / what / she ) the news?
What would Mary do if she heard the news?
判断のポイント:「〜したらどうするだろうか」は仮定法過去の疑問文です。
仮定法過去の疑問文では、主節が What would + S + do ...? の語順になります。if節の動詞は過去形 heard を使います。
仮定法過去の疑問文を作る力は、英作文でも非常に重要です。